父の死後、疎遠だった兄が「俺にも財産をよこせ」と突如迫ってきました。生前父からは「財産はすべてお前に渡す」と言われていましたし、渡す必要はありませんよね? 同居してずっと面倒を見ていたのは私だけです
「あんなに仲が良かったのになぜ」「もう二度と会いたくない」など、家族の関係が一気に変わってしまうリスクがあるのが財産の絡む相続です。「親にそれほどの財産なんてないはずだし、自分には関係ない」。 そう思っている人は多いかもしれませんが、自分の知らない親の財産が死後発覚する、所有していた不動産の価値が購入時より大幅に値上がりしているなど、故人の死後相続が急に発生し、その財産を巡るトラブルに発展するケースは多々あります。 相続トラブルの中でもよく問題になるのが、タイトルのようにきょうだい関係が悪い場合の、きょうだい間の財産の相続割合です。本記事では、このケースの相続トラブルについて、トラブルを未然に防ぐためのポイントも含め解説していきます。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
遺言を書いていても、相続人の「遺留分」は奪えない
一般社団法人相続解決支援機構が、相続を経験した20代~60代までの男女164名を対象に2022年に行ったアンケートでは、「相続のトラブル経験あり」と回答した人が78.7%、そのうち遺産総額が1000万円以下の相続トラブルが42.1%という結果が出ており、決して相続トラブルはひとごとではないことが分かります。 今回のケースでは、父(母はすでに他界)と兄、弟の家族で、弟が父と同居し身の回りの世話を一手に引き受けていたのに対し、兄は父や弟とは疎遠だったという状況です。弟は生前に父から「全財産はお前に渡す」と言われ、父はその旨を記載した遺書を書いていました。相続において、遺書を残すことは大事なポイントとなります。 しかし、相続には「遺留分」という民法で定められた法定相続人が請求できる権利があり、たとえ故人が遺言を書いていたとしても「遺留分」については奪うことができないとされています。 今回のケースでは法定相続人が兄と弟の2名で、本来は2分の1ずつ財産を相続することができるのですが遺留分の割合は本来受け取る権利のさらに2分の1となるため、兄は全財産のうちの4分の1を遺留分として請求する権利があります。 そのため、「父は遺言で全財産を弟である自分に渡すと書いているから兄には渡さない」という理屈は通らないのです。