【都知事選・石丸ショック】石丸氏のメディア批判が真っ当な理由…なぜ新聞・テレビは無党派層の動きを読み誤ったか
小池百合子氏が3選を果たした東京都知事選で、石丸伸二氏が蓮舫氏を上回り2位となった。 当初から「小池vs蓮舫」という構図で報道を続け、石丸氏をダークホース扱いしてきた新聞・テレビなどマスメディアは、なぜ最後まで情勢を的確に判断できなかったのか。 そこには、マスメディアの取材体制が抱える構造的な問題がある。このままではメディア不信はさらに高まり、読者・視聴者離れが加速しかねない。(JBpress) (田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授) 【写真】石丸氏が掲げた「政治屋の一掃」めぐりテレビインタビューでは質問者とバトルも。やりとりは「石丸構文」としてSNSで話題に 東京都知事選は7日に投開票が行われ、現職の小池百合子氏が3選を果たした。過去最多の56人が立候補した今回の都知事選で有権者の間に強く印象が残ったのは、158万票あまりを獲得し次点となった前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏だろう。 小池氏の対抗馬と報じられてきた前参院議員の蓮舫氏は122万票あまりで3位にとどまった。既存メディアが作り上げた「小池vs蓮舫」「自民vs反自民」の構図は何だったのか。政党や支持団体などの取材に偏る従来の取材手法が、SNS時代の選挙に通用しない現実を突きつけた格好だ。 「マスメディアが当初全く(自らのことを)扱わなかったからだ」 石丸氏は7日夜、報道陣から問われた敗因について、強烈な皮肉を込めて返した。 この発言には一定の説得力がある。メディアの報道では、小池氏を本命とし、蓮舫氏を対抗馬に見立て、石丸氏は3、4番手のダークホースとして扱われてきたからだ。 ところが、実際の投票結果では、石丸氏は蓮舫氏に約37万票の差をつけて2位となっている。対抗馬とダークホースでは有権者の見方は違う。小池氏との差は約126万票あったとはいえ、メディアが当初から石丸氏を対抗馬の一人と位置付けていれば、報道を目にした有権者の投票動向にも違った影響を与えていた可能性はあるだろう。
■ 選挙報道における「公平性」とは何か 広島出身の石丸氏は、県立高校から京都大学経済学部へ進学。卒業後はメガバンクの銀行員としてキャリアを積み、2020年に地元の安芸高田市長に初当選。今回は市長を退任して都知事選出馬を決めた。 選挙報道では、政党などの組織的な支持基盤や候補者の知名度などからマスメディアが一定の得票数を予想しつつ、各候補者の扱いの大きさを決める。選挙報道には公平性が求められるが、全ての候補者を横一列で報じることが必ずしも有益な情報の提供になるとは限らない。 実際、今回の都知事選では上位3人を除く53人は得票が有効投票数の1割未満となり、供託金(1人当たり300万円)没収の対象となっている。NHK放送文化研究所の記事によれば、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が2016年の参議院選挙と東京都知事選挙をめぐるテレビ放送について通知した「意見書」では、放送の「公平性」とは、候補者に同じ時間を与えるような「量的公平」ではなく、各局が自主的に基準を判断する「質的公平」だと言及している。 現職で自民、公明両党、地域政党の都民ファーストの会などの支援を受けた小池氏、立憲民主党と共産党、社民党の支援を受けた蓮舫氏には、当初から一定の得票が見込めた。一方、石丸氏は市長としての実績があったものの、政党の支援を受けていなかった。そのため、当初の扱いに差が出たというのが、メディア側の言い分になるだろう。 他方、メディアが今回の選挙戦で盛んに報じた争点の一つが、「無党派層」の取り込みだった。