埼玉県内のクルド人排斥激化 市民らヘイト規制条例制定求める
攻撃が激化した背景
こうした攻撃が始まったのは入管難民法の改正が国会で審議されていた昨年5月ごろ。改正に反対する姿がレイシストやネット右翼の目に留まった。事態の急速な悪化に危機感を募らせる一方、中島さんが強調するのは「ヘイトスピーチは過去にもあり、対策が不十分だったから今の状況になっている」という行政の不作為。2009年からフィリピン人や中国人を標的にした排斥デモなどが行なわれており「最近ではトランスジェンダーや障害者へのヘイトもひどい。クルド人だけでも、川口、蕨だけの問題でもない。さまざまなマイノリティを広域で守れる枠組みが必要だ」と説いた。 10月4日には市民団体「ヘイトスピーチ禁止条例を求める埼玉の会」も請願書を大野知事あてに提出。クルド人に限らず、在日コリアンや朝鮮学校へのヘイトスピーチも続いているとして、罰則条例の制定を求めた。大野知事は参議院議員時代に部落解放同盟の機関紙『解放新聞埼玉』のインタビューに答え、ヘイトスピーチは法規制すべきだとの見解を示している。今年3月の会見でも「ヘイトスピーチは地域社会から徹底して排除されなければならない」と語っている。かつてない悪質さで広がるヘイトを目の前にして、その政治信条の本気度が問われている。
石橋学・『神奈川新聞』記者