ホンダの次世代EV「ゼロシリーズ」が成功するカギとは?
渡辺 そのとおり! 23年に国内で売られたホンダ車の40%近くがN‐BOX。国内販売トップを走る〝絶対王者〟のN‐BOXですが、WR‐Vと同様、マイルドハイブリッドを含めた電動機能が採用されていません。 フィットやフリードにはハイブリッドのe:HEVが用意されますが、フィットの売れ行きはN‐BOXの約25%です。現状だとホンダは電動やEVのブランドイメージは乏しい。せっかくホンダeを発売したわけですから、今後も改良を重ねながら販売を続けるべきでした。 ――ホンダeにそこまでの価値がある? 渡辺 はい、大いにあります。EVの国内販売状況を見ると、日産サクラが圧倒的な1位です。23年の届け出台数は3万7140台で、軽自動車を含む乗用EV全体の40%以上を占めました。 EVは1回の充電で走行できる距離が短いと指摘されますが、軽自動車なら、充電設備を持てる一戸建ての世帯がセカンドカーとして使います。遠方への外出にはファーストカーを利用するため、軽自動車サイズのEVであれば、走行可能な距離が短い不満も生じません。そして長距離を走らないなら、電池容量も小さくできて価格も抑えられます。 ――それでサクラは人気を高めましたね。 渡辺 ホンダeも全長が3895㎜のコンパクトカーですから、セカンドカーの需要に応えられます。 ――ただし価格が高い。 渡辺 ホンダeの最終型の価格は495万円ですが、装備を過剰なほど装着しています。そこで、装備のシンプルな仕様をリーフの最廉価グレードになるXよりも少し安い390万円で設定すると、国の補助金となる約70万円を差し引けば、約320万円で手に入ります。人気の高いプリウスGとほぼ同額で、売れ行きを伸ばす余地も生じるでしょう。 ――要するに長く売ることが大切であると。 渡辺 近年のホンダの欠点は、ユーザーの不安を誘う商品戦略です。オデッセイやシビックは一度廃止して復活させ、CR‐Vは再び廃止しました。そして今後のCR‐Vは、燃料電池車で復活する予定です......。ユーザーが新型に乗り替えようとしても、車種が廃止と復活を繰り返したら不安でしょう。 ――確かに嫌ですね。 渡辺 以前のインサイトも同様です。初代は低燃費を追求して、その廃止から3年後に登場した2代目は、価格を徹底的に安くしました。2代目の終了から4年後に発売された3代目は、上質感を表現したと述べています。 しかしユーザーは、生産の中断と頻繁に変わるコンセプトに付いていけません。先に述べたホンダeの「使命は終わった」という廃止理由も、ユーザーが聞けば寂しく感じるでしょう。メーカーは生産を終えても、ユーザーはそのクルマを使い続け、子供や孫に相当する後継車種にも乗りたいのです。 ――ちなみにホンダゼロシリーズは2026年より発売されるグローバルカーです。ズバリ、成功のカギは? 渡辺 ホンダはユーザーの気持ちを理解しないと失敗に終わります。逆にホンダがユーザーに対する愛と理解を取り戻せば、私はホンダがEVで成功することは十分に可能だと思っています。 写真提供/本田技研工業 日産自動車