“医師”と“陸上選手”の二刀流・広田有紀 集大成の日本選手権へ「力強い走りで恩返し」【新潟】
6月27日にデンカビッグスワンで開幕する陸上の日本選手権。最終日の女子800mにはサトウ食品新潟アルビレックスランニングクラブに所属する広田有紀選手も出場予定です。高校時代にはインターハイで優勝し、県記録保持者である広田選手のこの大会にかける思いを取材しました。 5月27日、1カ月後に迫った日本選手権に向けて練習を公開したサトウ食品新潟アルビレックスランニングクラブ。 【サトウ食品新潟アルビレックスランニングクラブ 広田有紀 選手】 「これは頑張るしかないなという、ポジティブな気持ちで新潟開催は喜ばしいニュースだと思っていた」 地元・新潟で開催される喜びを語ったのは女子800mに出場する広田有紀選手です。 高校時代は進学校の新潟高校に通っていた広田選手。 【広田有紀 選手(当時高校3年)】 「授業はちゃんとついていかないと。テストが大変なのでちゃんと聞く」 “文武両道”をモットーに、勉強とともに競技にも励み、高校3年のころにはインターハイと国体を制覇。 大学卒業後、2021年の日本選手権では惜しくも準優勝で東京オリンピック出場にあと一歩届かなかったものの、県記録を塗り替えました。 そんな輝かしい活躍を見せてきた広田選手ですが、いま大きな転機を迎えています。 【広田有紀 選手】 「研修医が今年で終わる。来年以降、3年目で一つの科に絞って、本格的に病院での責任が重くなるようなフェーズではあるので」 医学部を卒業し、医師免許を取得している広田選手。卒業直後の3年間は競技に専念していましたが、去年から新潟大学病院で研修医として勤務しています。 【広田有紀 選手】 「できることが少しずつ増えつつも、やっぱりまだまだできないことと毎日向き合っている状況なので全然慣れない感じ」 このとき研修をしていたのは救急科。 【広田有紀 選手】 「その周りの間接とか痛みあります?」 救急車で運ばれてきたのはヘビにかまれたという患者です。 【広田有紀 選手】 「傷口を見るかぎりは深さも全然ないし、腫れてもない。痛みだけで、特にやることとしては採血をして、異常がないかをぱっと見て」 一息ついたのもつかの間。すぐに次の患者が運ばれてきました。救急科ではその場で診察や検査を行い、必要な処置を判断しなければなりません。 【広田有紀 選手】 「同期と上の先生と話しながら『鑑別は何かな』と、『じゃあこの検査する』と話しながら進めている」 夕方まで勤務したあと、病院近くの新潟市陸上競技場で2時間ほど練習するのが基本的なスケジュールです。 【広田有紀 選手】 「少ない時間でも集中力さえあれば、自分としては80点くらいの練習はできているかなと思う」 メリハリのつけ方は医師免許取得を目指して勉強しながら大会に臨んだ大学時代の経験が生きているといいます。 陸上選手と研修医の二刀流で多忙な生活を送る日々ですが… 【広田有紀 選手】 「今は研修医だからこそ色んな責任がまだ少ないが、来年以降は専攻医といって、一つの科に絞って責任を持った状態で働くので、そうなったからには陸上選手はそろそろ厳しいかなと思っている」 そんな中、舞い込んだ日本選手権の新潟開催。 本来であれば広田選手は今年4月から別の病院での研修になるはずでしたが、大会までの間、練習場所に近い新潟大学病院で研修できるよう、病院長に直談判しました。ただ… 【広田有紀 選手】 「事実を色々言うと、けっこう足が厳しい状態で、スタートラインに立てたらいいなくらいの状態ではある」 4月のレースで左足のアキレス腱を痛めてしまったのです。公開練習の日もトラックで走ることはありませんでした。 【広田有紀 選手】 「なかなか歯がゆい。しかも、やっぱり腱を使わないと足もなまってしまって、いま左のふくらはぎがかなり落ちてしまっているような状態。そこの面で視覚的にも不安を感じているが、焦っても意味がないので」 スタートラインに立てるかどうかわからない状態の中、来たる日本選手権に向けて心肺機能や体幹のトレーニングに励みます。 その原動力には、研修医として働くことで生まれた人とのつながりがありました。 【広田有紀 選手】 「患者さんも自分の記事を読むことがあったりして、どの月でも必ず一言や二言、『先生の記事見たよ』とか、すれ違う看護師さんや上の先生に言っていただけたり」 研修医として、そして選手として…節目のレースの号砲は目前に迫っています。 【広田有紀 選手】 「新潟の人の力、支えあっての15年間、女子800mを続けられてきた背景があるので、その恩返しも含めて、力強い走りをお世話になった新潟の地で精一杯やりたいと思う」
NST新潟総合テレビ