バレエダンサーから歌舞伎役者を経て舞踊家へ 坂東玉三郎さんを師と仰ぐ梅川壱ノ介さんがこだわる最新技術と伝統の融合
◆「桃太郎」を8月に福岡で上演
歌舞伎役者で人間国宝の坂東玉三郎さんに師事し、海外でも活躍する舞踊家、梅川壱ノ介さん=大分県日田市出身=が8月4日、福岡市で舞踊劇「桃太郎」を上演する。バレエダンサーから歌舞伎役者を経て、日本舞踊にたどり着いた異色の経歴を持つ梅川さん。そのすべての要素を詰め込んだ新機軸のエンターテインメントだ。 【画像】子ども無料招待申し込みのQRコード 梅川さんは中学3年の春、福岡市で劇団四季の「美女と野獣」を見て感激。ミュージカル俳優を目指し、日田市の高校を卒業するまで声楽のレッスンを受けた。父親から「夢は応援するが、大学には行け」と言われ、「雪が積もる地方に住んでみたい」と新潟大経済学部に入学した。 思い立ったら即行動する性格。新潟ではバレエ教室に通い、先生の家に住み込みで熱中した。卒業後は、名門の東京バレエ団に所属。しかし、公演先のヨーロッパで「もっと日本の芸術を知りたい」と考えた。 2年間の活動後、2007年に国立劇場伝統芸能伝承者養成所(東京)の歌舞伎俳優研修に飛び込んだ。3年間の研修中、25歳の時に出会ったのが講師として訪れた玉三郎さんだった。 「人柄、所作、存在自体の美しさに感動した」 腰の入れ方やすり足など日舞の基本から教わり、「人生の師であり、芸道の師」となった。今ではトークショーなどの全国公演で相方を務める。 「先生は、果てしなく輝く星。僕はそこを目指しているから迷いがない」 研修を終えると、中村獅童さんの一門に加わり、歌舞伎役者として6年間を過ごす。舞踊家として独立したのは16年。「歌舞伎では立ち回り役がほとんど。どうしても踊りたかった」 最初は「雲をつかむような日々」だったが、日田市がイベントに招いてくれたり、同郷の人たちからの応援で海外公演したり。徐々に知名度も上がり、オーケストラとの共演や現代アートとの融合作品も手がけるようになった。 昨年からは、知的障害のある子どもたちにダンスや演技を教える「アヴニールスクール」(東京)の理事長に就任。福岡校でも月に一度、日舞を教えている。 「桃太郎」は昔話をもとにした創作。落語家の語りに合わせ、梅川さんが文楽の人形のように桃太郎を演じる。ピアノ、バイオリン演奏もあり、プロジェクションマッピングで鬼や犬、猿、キジが立体的に現れる。 「最新技術と伝統の融合で、ワクワクしてほしい」 梅川さんは、自分が初めてミュージカルを見た時のような感動を観客に味わってほしいと願っている。 ■舞踊劇・御伽ノ介(おとぎのすけ)絵巻其壱「桃太郎」 8月4日午後1時半から、福岡市天神のアクロス福岡シンフォニーホールで。全席指定4千円。チケットぴあなどで販売中。3歳から18歳以下の500人を先着順で無料招待。問い合わせはアクロス福岡チケットセンター=092(725)9112。