過渡期のアトレティコにやって来た“久々のビッグネーム”フリアン・アルバレス、名将ペップの采配に嫌気が差しマンCを飛び出した若きFWの起用法と加入効果は?
フリアン・アルバレスはアトレティコ・マドリーが獲得した久しぶりのビッグネームだ。その前の大物選手と言えば、2019年夏のジョアン・フェリックスまで遡らなければいけない。しかし、このポルトガル代表FWの場合は、加入当初からディエゴ・シメオネ監督の戦術への適応を疑問視する声があった。結果的にその不安が的中し、今夏に“裏門”から退団することになったが、アルバレスはまさにその逆で、シメオネ監督の戦術に最適のアタッカーであると見られている。 【動画】開幕から点の取り合いとなったビジャレアル対アトレティコ戦のハイライトをチェック! アトレティコは近年、ボールポゼッションに比重を置いたサッカーを志向しているが、これについてはその最高レベルともいえるマンチェスター・シティで経験済み。足元の技術に優れており、相手の守備ブロックをこじ開け、ラストパスを繰り出すといった芸当もお手の物だ。守備面でも前線から積極的にプレスをかけ、献身的に走り回る。純粋なストライカーではないとはいえ、ゴール前のフィニッシュワークの精度も折り紙付きだ。前線の強化が今夏の最優先事項のひとつだったアトレティコにとって、アルバレスの獲得は考え得る限りベストの選択だったと言える。 さらにアルバレスの獲得による相乗効果も大きく期待できる。その筆頭格がエースのアントワーヌ・グリーズマンの復活だ。すでに33歳。フル稼働による疲労の蓄積に怪我も重なり、昨シーズンは後半戦にパフォーマンスを低下させたが、ポストプレー、フリーランニング、プレッシング、カバーリングと攻守にわたってアグレッシブにハードワークするアルバレスがいれば、負担は軽減されるはず。現地でも「グリーズマンのゲームメイカー化が加速する」と期待が高まっている。 相乗効果を期待できるのは、アレクサンダー・セルロトとの関係性も同様だ。セルロトはレアル・ソシエダからビジャレアルに移籍し、2トップの一角として出番を増やした昨シーズンに得点力がアップ。最終節までピチーチ(得点王)争いを演じた。大型でポストプレーも得意だが、最前線で身体を張り続けるというよりは、斜めの裏抜けやサイドに流れる動きに特徴がある。一方のアルバレスもタイミングの良いダイナミックな動き出しが持ち味だ。そんなふたりが前線を形成することで、攻撃の奥行きが確保され、そこにロドリゴ・デ・パウルやサムエル・リノといった2列目、3列目の選手も絡んでくれば、崩しのバリエーションは自ずと広がっていくだろう。 新たなチームメイトとコンビネーションを構築する際に大きな強みとなるのが、シティで培ってきたスキルのひとつであるポリバレント性だろう。アルバレスは名将ジョゼップ・グアルディオラ監督の下で、CFだけでなくインサイドハーフやウイングとしてもプレーした。結果的にその“便利屋的な扱い”に嫌気が差し、移籍を志願する事態を招いたが、おかげでアタッカーとしての多様性は間違いなく高まった。 アルバレスは一体どれだけの選択肢をシメオネ監督にもたらし、どこまでチーム力を押し上げることができるのか。アナリストのアルベル・ブラジャ氏は、スペインメディア『Relevo』でその加入の意義を次のように説明している。 「アトレティコは今、成長プロジェクトを維持することができるかどうかの分岐点に立っている。フリアン・アルバレスはチームが過度期に直面している中で加わった起爆剤であり、成功すればクラブがシメオネ監督とともに歩んできた道を信じて、さらに突き進んでいくというメッセージ力を倍加させるだろう」 文●下村正幸
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