もっと高みへ! 日本初の月面着陸
「報道部畑中デスクの独り言」(第356回) ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、日本初の月面着陸について― 【写真全9枚】SLIM着陸予定時刻直後のデータ画面 機体はデータ上は「着陸」を示している
小欄では先日、「今年(2024年)注目の科学トピック」についてお伝えしました。その注目の1つが「日本初の月面着陸なるか?」でした。まさにそれが現実のものとなりました。日本初の月面着陸成功、世界では旧ソ連、アメリカ、中国、インドに続いて5ヵ国目となります。 1月19日深夜10時から、神奈川県のJAXA相模原キャンパス、宇宙科学探査交流棟のプレスセンターでその瞬間を見守りました。ここは成功の歓喜に沸いた小惑星探査機「はやぶさ2」の取材でもおなじみの場所です。今回は取材現場の様子も交えて振り返ります。 主役であるJAXA=宇宙航空研究開発機構の月着陸実証機「SLIM」……昨年(2023年)9月7日に鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられました。「SLIM」は推進剤を含めておよそ700kg、軽自動車ほどの重さです。打ち上げ後、およそ4ヵ月かけて飛行し、スイングバイなどを経て、昨年12月25日に月の周回軌道、今月(1月)14日には円軌道に入りました。
今回は日本初の月面着陸に加えて、狙った場所から、わずか100m以内にピンポイントで着陸するという世界初の技術に挑みました。これまでの月着陸における着陸精度は数km~十数kmでした。つまり、これまでのように「月にただ降りる」のではなく、「降りたいところに降りる」という技術です。 これには「画像照合航法」という技術が使われました。目指すは「SHIOLI(しおり)」と呼ばれるクレーターの周辺です。装着されているカメラで月面の写真を撮影します。これを画像のソフトウェアによって、どこがクレーターかを機体自身で探し出すわけです。俗に「パターンマッチング」と呼ばれる手法で、クレーターの地図を参照して場所を割り出すというものです。 この地図は月周回衛星「かぐや」などによって長年蓄積された大量の観測データがモノを言いました。はやりの言葉で言えば「ビッグデータ」です。これまでコツコツと積み上げてきたノウハウの、いわば「集大成」と言えます。