<カジノ法案インタビュー全文> 自民・岩屋氏、共産・大門氏に聞く
カジノ構想をめぐって、推進を目指す岩屋毅衆議院議員(自民)と、否定的な大門実紀史参議院議員(共産)にインタビューしました。岩屋議員は、臨時国会にカジノ法案提出を目指す国際観光産業振興議員連盟(IR議連=通称カジノ議連)で幹事長を務めています。大門議員は、ギャンブル依存症などの多重債務者問題への取り組みからカジノ解禁に反対しています。 <インタビュー動画と画像>岩屋氏、大門氏に聞く 【両氏のプロフィール】 岩屋毅(いわや・たけし)=自民、衆院議員 1957年8月24日、別府市生まれ。大分3区。1990年に初当選。当選回数は衆議院6回。自民党安全保障調査会会長など。 大門実紀史(だいもん・みきし)=共産、参院議員 1956年1月10日、京都市生まれ。全国ブロック。2001年に初当選。当選回数は参議院3回。共産党参院国会対策委員会副委員長など。 以下は、インタビューの全文書き起こしです。 * * * ■「カジノ構想」になぜ賛成なのか――自民党・岩屋毅議員 Q:まだちゃんと煮詰まってはないのかもしれないんですけれども、いろいろと批判もある中で、どういう制度体制・体系を考えてらっしゃいますかね? そのIR法案というのについてのご説明をお願いします。 岩屋毅議員:まず、基本的な考え方は、日本中どこにでもそういうものをつくっていこうということではありませんで、地域の自治体が望み、そして国が審査をして、認可をした地域においてのみ、カジノを含む、あくまでも統合型のリゾートをつくることを認めるようにしようという、こういう構想です。したがって国のほうでカジノ管理委員会という厳しい権限を持った、強力な権限を持った委員会を立ち上げて、そこにおいて施行に向けてのルールというものをしっかりと作り、そのルールに基づいて厳しく監視・監督をするという体制を作るということを前提にしております。 したがって、当たり前のことですけど、いわゆる組織悪は完全に排除すると。それからカジノというのは唯一、入り口でIDチェックができるゲーミングショーですから、青少年への悪影響がないように、きちんとそれは対策を講じると。それから、今の公営ギャンブルとかは、パチンコもある意味そうですけれども、どうしてもごく一部に依存症みたいな方が出てきてしまうと。で、もし、今度日本にカジノというものを生み出すことができれば、その収益を使って、あらゆるゲーミングから発生する依存症患者の対策を講じると。もちろん、予防・抑止のための対策も講じるということを前提に、そういう施設を、あくまでも国際観光振興のために、地域振興のために、国や自治体の財政に寄与することができるように。そして復興についても寄与することができるように。そういう目的を持って、われわれは案を提出したいという風に思っています。 Q:いわば、ギャンブルということで地下組織というか、刑法犯なところがあって、やっぱり刑法で罰せられますし、なかなか日本でできないから余計地下に潜ってしまうという面が一方であって、仮にこれが特区であったとしても、法制化したとしたら、そういう地下で見えなかったものというのはどうなるという風にお考えですか? 岩屋毅議員:そういったものを撲滅するためにも、きちんと認めて、管理をすべきなんじゃないでしょうか。昔の禁酒法と、アルカポネの関係と、私、一緒だと思いますよね。で、今、世界、だいたい130カ国ぐらいで、このカジノというスタイルのゲーミングが行われているということは、いわゆるゲーミングのインターナショナル・スタンダードなわけですよね。で、OECD諸国の中で、それができないのは日本だけですよね。で、禁酒をしてるから、まさに地下に潜って、それこそ組織悪の資金源になったりしている現状が残念ながらあるわけですから、これが公に認められて、世界中からファミリーでやってくるディスティネーションとしてのリゾートってものに変われば、何もそんな危ないところに行く必要はないわけですから、その問題の解決のためにも私は合法化することが必要なのではないかなと思っています。 Q:一方で、現実的な考え方をすると、ギャンブルそのものが悪だと。やる人が必ずいるとはいえ、悪だからまったく手をつけないほうがいい、という現実的な考え方もあるんですけど、ここに関してはどう考えていけばいいですか? 岩屋毅議員:我が国は、これまでもたくさんのギャンブル法制を立法してきたわけですよね。で、その結果、合法的に競輪・競馬・ボート・オートレース・宝くじ・toto。これは刑法上は全部違法なのです。だけど公の目的のために資するのであれば、特別にその違法性を阻却すると言うんですけどね、法律用語で言うと。そういう措置を取って、認めてきたわけですよね。だから、それと同じような措置を今回も取らせていただいて、しかし、その収益というのは広く、その地域のみならず、国民全体に還元できるような仕組みを作っていくべきだというふうに考えております。 やっぱり、 Do not、Do notですべてを禁止していくということではなくて、それではやっぱり社会にゆとりというものがなくなっていくと思いますよね。だから、きちんとしたルールを作って、そこでちゃんとコントロールをする、管理をした上で、そこからも収益をまた地域に還元をする。そういう仕組みを作っていくのが成熟した国というか、大人の国なんではないかな、と思うんですよね。 * * * ■「カジノ解禁」になぜ反対なのか――共産党・大門実紀史議員 Q:カジノ法案が次の国会(※)で超党派の中で提出されそうだ、という中ですけど、そもそもカジノ法案、ギャンブルに対して、国民がどういう気持ちなのかというのはなかなか出なくて、経済効果だけの話になっています。そのそもそもの問題点、まだ法案が出てきていないということもあるので、その辺りからご指摘いただければと思います。 大門実紀史議員:そもそも、賛成・反対という以前に、今、刑法で禁じられているんです、賭博のというのは。これには歴史があって、やはり賭博行為というのは、犯罪の温床にもなるし、暴力団も絡んでくるし、そういう歴史的な判断があって、刑法で禁じたということがあるわけです。だから賛成・反対と言うよりも、そういう重みのあるものを、わざわざ解禁するのはなぜなのかと。なぜ解禁しなきゃいけないのかと。そういう問題の立て方が重要だと思っております。 その上で、なぜこんなことが出てきたかというと、なんのこっちゃなくて、しばらくデフレ不況で大変だからと、公共事業も減ってきたから、そういう国際娯楽施設みたいなのをつくって箱物をつくりたいということと、で、邪道ですけれど、外国人から金を巻き上げようというような、経済政策としてはまともな話じゃないですよね、これは。そんなものを、そのために動いている議員がいるわけですけども、超党派の議員連盟ですけれど、私は各政党の各議員全員が、こんなものに大賛成というわけではなくて、そういう、カジノを解禁してほしい業界から、企業から、支援を受けている議員が中心になって動いているという構造はよく見ておく必要があると思うんですね。 業界というのは、大きく言えば、やはりああいう国際娯楽施設になりますと、PFI方式、箱物作りますからゼネコンも含めて、そういう、商社まで入ってきますけど、そういうものですね。で、中身のカジノでいきますと、やはりゲーム機械がありますので、今ゲーム機械を作っているパチンコのゲーム機を作っているメーカーがそのまま、その仕事を取りたいと狙っていると。 で、もう1つはパチンコ業界が今、三店方式ということで直接お金をお客さんが勝った場合に渡せないんだけれども、今、商品を渡して、それをお金に換えてもらうと。で、三店方式でかろうじて、すれすれのことをやっていますけど、カジノがもしも解禁になったら、少なくともその地域のパチンコ屋さんは、「うちだけなんで三店方式なんだ」と「直接、現金を渡して何が悪い」と、こういうことがあって、やっぱり三店方式から直接、現金をお店でお客さんに渡せるとしたいためには、こういうカジノも広がってくれると三店方式から解放されるというようなこともあったりして、パチンコ業界は進めてもらいたいと。一部、間違った報道でパチンコ業界が反対してるんじゃないかとありますけど、そうじゃないです。そういう三店方式をなくす環境を整えてほしいということがあったりするわけです。ですから、パチンコ業界からお金をもらっている議員が、カジノ問題でも先頭になって動いているという関係にあります。 ですから、こんな邪道の経済政策で、しかも利権で動いている議員がいると。まともな話ではないということで、なんかもう、こんなものはなんで、そんな国会で法案出してですよ、もうちょっと表だってくれば、「いかがなものか」という意見はもっと出てくると思います。ただし彼らは特区と言って、だから「特別な場所に作ります」という発想ですから、例えば東京なんかは市民運動、割と杉並とか、世田谷とか、青少年の環境に悪いんじゃないか、というような非常に敏感な地域がありますけど、お台場に特別に限定で作るんだというと、そういう人たちもちょっと遠いし、そこだけ限定ならばということとかで、わっと地元に造られると反対運動いきますけど、そういう面があって、どういう、世論がどう動くか、ちょっと見えませんけど、少なくとも被災地の仙台空港のそばに作ろうと思った計画は、とりあえずつぶしましたけど。 あれはやっぱり、住民の方々が、「そんな計画があるの?」っていうところがちょっと聞こえてくると、「そんなのやめてよ」という声が出てきて、いろんなことがあってつぶれましたけれど、そういう意味では世論が猛反対となるかどうかというのはあるんですけれど、そういうこともあって、隙を突いて、とにかく特区でいくつか造って、それを全国に広げていこうということになるかと思いますけど、というようなことを願っているかと思いますけれど、やがてそれがいろんなところにできて、しかも一般国民もどんどん参加できるというようになると、やっぱり、もともとの刑法で禁じられている理由であります、やっぱりギャンブル依存症を増やしたり、家庭破壊、犯罪を誘発するということが広がるのは間違いありませんから、その度合いはちょっと分かりませんけれど、そんなものなんでやるのか、ということに尽きるわけですね。ええ。 (※インタビューは臨時国会の開会前に収録)