相次ぐ豪雨災害、再浮上するダム建設待望論 事業着手し住民移転も廃止となった計画 度重なる水害に危機感
整備計画見直しへ
国交省は河川整備計画の見直しに先立ち、その上位にある河川整備基本方針を昨年12月に変更。気候変動による降水量の増加などを考慮し、県内の基準地点となる天竜峡(飯田市)での洪水時の想定最大流量(基本高水)を現行の毎秒5700トンから5900トンに引き上げた。 これに続く整備計画の見直しについて、同省天竜川上流河川事務所(駒ケ根市)は「既存施設の有効活用や新規ダム、堤防の整備などあらゆる選択肢を検討し、治水の目標規模の設定とそれに見合う具体的な整備メニューの策定を早急に進めたい」とする。
「すぐに土砂たまる」、費用対効果を疑問視する声も
戸草ダムを巡っては、伊那市議会も22年3月、建設実施時期の早期検討を求める議員提出の決議を賛成多数で可決している。 一方、反対した3人の市議のうち柳川広美市議(共産党)は、一帯の脆弱な地質を踏まえて「ダムを造ったとしてもすぐ土砂がたまる可能性がある」とし、治水施設としての費用対効果を疑問視。「建設まで何年かかるか分からないダムより、流域治水の考え方を踏まえて他の対策を強化すべきだ」と主張する。 ダムの新設は多額の費用が必要な上に、自然環境への負荷も小さくない。一度止まったダム計画を再開させるべきか、否か―。地域の治水の在り方について、流域の関係者がさまざまな観点から考えていく必要がある。