安藤サクラ、セーラー服で海に飛び込む〝リアル度胸〟で各賞総ナメ 実力演技派で料理上手な一面を持つ奥田瑛二の次女
【1万本を見た映画記者 極私的スター名鑑】 女優の評価は度胸のあるなしが左右する。作品の中で、どこまで開き直ることができるかが大切なのだ。安藤サクラの場合は、のめり込み演技が際立っている。 【写真】夫婦で舞台あいさつに登壇した安藤サクラ、柄本佑 おなじみの実力演技派で、監督も手がける奥田瑛二の次女。料理が得意な彼女は奥田監督がモントリオール映画祭グランプリなど3冠に輝いた「長い散歩」(2006年)で炊き出し班のスタッフとして参加。 主演の緒形拳と子役が立ち寄るファミレスのウエイトレス役で出演も果たした。筆者がスタッフ試写で会った彼女は当時18歳。素顔はちょっと内気な恥ずかしがり屋だった。 続く奥田家総動員の映画「風の外側」(07年)は女子高生とチンピラの純愛を描く青春映画。クランクイン直前に主演女優が降板したため、サクラが主役に抜擢された。ヒロインがセーラー服を着たまま海に飛び込むシーンがあり、度胸満点の演技を見て大物女優になる予感がした。 その後の大活躍はよく知られている。盗撮がテーマの「愛のむきだし」(09年、園子温監督)でヨコハマ映画祭助演女優賞を獲得。若手監督の作品に次々と出演し、映画各賞の常連になった。 私生活では12年に芸能一家の長男、柄本佑と結婚。同年にキネマ旬報の主演女優賞と助演女優賞をダブル受賞して同誌史上初の快挙を達成した。 姉の安藤桃子監督と組んで介護士を演じた「0・5ミリ」(14年)や体を絞りボクサーを熱演の「百円の恋」(同、武正晴監督)なども強烈な印象を残した。 今年の日本アカデミー賞は「怪物」(是枝裕和監督)で最優秀主演女優賞、「ゴジラ―1・0」(山﨑貴監督)で同助演女優賞を独占。快進撃はどこまで続くのか。 ■安藤サクラ 1986年2月18日生まれ、38歳。東京都出身。 ■垣井道弘(かきい・みちひろ) 1946年、広島県三原市生まれ。明治大学文学部卒。週刊誌「女性自身」の記者を経て、映画評論家になる。著書に「MISHIMA」(飛鳥新社)、「今村昌平の製作現場」(講談社)、「ハリウッドの日本人」(文芸春秋)、「緒形拳を追いかけて」(ぴあ)などがある。