「一生ヒラ社員」労働組合員を“6畳部屋”に配属&会議から追い出し…裁判所が退職勧奨を“やりすぎ”と判断する基準
ジャッジ
Xさんの勝訴です。裁判所が命じた金額は以下のとおりです。 ■ 会社と社長 組合からの脱退勧奨、退職勧奨 20万円 営業2課への配属、会議への参加禁止 30万円 ■ 専務 組合からの脱退勧奨、退職勧奨 20万円 会議への参加禁止 10万円 順番に見ていきましょう。 ▼ 組合活動から脱退勧奨、退職勧奨 ■ 専務の責任 裁判所 「専務の発言は、組合活動を嫌悪してなされたと推定でき、組合に対する支配介入の不当労働行為にあたるので、労働組合からの脱退勧奨は違法です。退職勧奨も違法です」 〈理由〉 ・組合を脱退すると昇進し、組合員のままだと昇進できないことを示唆している ・組合員を続けていると社長からよく思われないですよ、と告げている ・組合活動をしたいのであれば別の会社へ行くよう勧めている ・組合を脱退した社員を特別扱いした例を示して、あなたも脱退すれば将来昇格することを示唆して脱退を勧めた ■ 社長の責任 裁判所 「専務は社長と意を通じてさまざまな発言をしたと推認できる。よって、専務の不法行為については社長も共同不法行為責任を負う」 ▼ 営業2課へ配属 裁判所 「会社がXさんを営業2課へ配属したのは、退職に導くという不当な動機・目的があったと推認できるので、人事権を濫用しており違法!」 〈理由〉 ・営業部を分割する必要性があったか疑問を差し挟む余地がある ・執務場所には常務取締役を配置させXさんほか1名を監視させていた ・常務取締役を配置する必要性・合理的理由を見出し難い ・執務スペースが6畳程度しかなく極めて異例な執務環境である ▼ 会議へ参加させず 裁判所 「会議に参加させなかったことも違法である。Xさんが組合員であることを理由として参加させておらず、Xさんを差別的に取り扱うものだからである」
マメ知識
■ 労働組合の権利サイキョー 労働組合は、会社と対抗していくための組織なのでカナリ強力に守られています。労働組合法がありますし、最高法規である憲法にも明記されているくらいです(28条で「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」が認められています)。今回は、組合の切り崩しにかかった専務の行為が違法と判断されたケースでした。 ■ 人間関係の切り離し 人間関係の切り離しは、パワハラの第3類型にもあたります。厚生労働省の指針では以下の行為は違法な人間関係の切り離しとされています。 ・意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること ・1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること 今回は1つ目のケースに近い事件でした。 ■ 退職強要 「ユー、辞めない?」くらいの勧奨ならセーフなんですが、強要するとアウトです。今回の事件は退職強要と認定されました。 今回は以上です。また次の記事でお会いしましょう!
林 孝匡(弁護士)