『機動戦士ガンダム』どうしてこうなった? 名前が一緒のMSが生まれたワケ
「ガンダム」のなかにも名前がカブった例も?
同じく『ZZ』で登場したMS「AMX-011 ザクIII」も、実は名前カブりで、「ザクIII」を名乗るMSはそれ以前にもいました。「MSV」の主力商品だった「MS-06R 高機動型ザクII」のなかの1機に「MS-06R-3 ザクIII」というバリエーションがあったのです。 もっとも、後者の「ザクIII」は文字設定だけの存在で、デザインは作られていません。R-2型の1機を改修して「MS-14 ゲルググ」の試験機にしたという設定のみです。そのため、ザクとゲルググの中間的なデザインとなり、「ザクIII」という名前も開発チームが付けた愛称のようなものとなっていました。 しかし、この設定を流用したと思しきMSが後に誕生しています。雑誌「SD CLUB」で連載されていた「M-MSV(ミッシングモビルスーツバリエーション)」にて発表された「MS-06R-3 S 高機動型ザクII(ゲルググ先行試作型)」で、型式番号や設定に共通点があることから、同じMSだとする説が一般的です。 この場合、先に発表されたザクIIIがアニメ版に名前を譲って、別の名前になったと考えられるかもしれません。設定的にも無理のない解釈なので、前述のドワッジほどツッコミを入れる人も少ないことでしょう。 『機動戦士ガンダムSEED』に登場した「ZGMF-X10A フリーダムガンダム」も名前カブりです。もっとも、正確にいえば完全一致ではありません。「フリーダム」と「ガンダム」を組み合わせた機体があるということです。 その機体の名前は「GF2-014NA ガンダムフリーダム」と「GF7-023NA ガンダムフリーダム」です。型式番号からわかる人もいると思いますが、MSではありません。『機動武闘伝Gガンダム』に登場した、「ガンダムファイト」専用に開発されたMF(モビルファイター)です。 共にネオアメリカ代表のMFで、「ガンダムファイト」第2回大会と第7回大会にそれぞれ出場しました。第2回大会に出場したガンダムフリーダムは優勝も果たしています。それゆえ『Gガンダム』の文字設定に、歴代優勝MFとして記載がありました。 一方の第7回出場のガンダムフリーダムは、季刊マンガ誌「コミックボンボン増刊号」で連載された『機動武闘外伝ガンダムファイト7th』にて登場したMFです。このマンガはアニメ『Gガンダム』の28年前の時代を描いた作品で、主人公「シュウジ・クロス」は後の「東方不敗マスター・アジア」でした。 アニメに登場した先代のシャッフル同盟が物語の中心で、ガンダムフリーダムに搭乗していた「マックス・バーンズ」は、後の「クイーン・ザ・スペード」といわれています。ちなみに同一世界観で名称がカブっているのは、実績のある名前を受け継いだという好意的な解釈ができるかもしれません。 もともとは放送終了後も人気のあった『Gガンダム』のガンプラ用企画として立ち上げられたそうで、TV本編と同じくメカデザインは大河原邦男さん、キャラデザインは逢坂浩司さんが担当していました。しかし結果的には企画はマンガ以上には進まず、連載も3回で終了してコミックスが1巻、発売されたにとどまっています。そういった経緯から、『SEED』のスタッフが名前を知らなかったとしても無理ありません。 こうして並べてみると、大々的な展開にならなかった作品は見落としがちになるものなのでしょう。今後も新作の「ガンダム」シリーズで過去にあった名前が出ても不思議ではありません。もっとも今はネット検索で簡単に過去の名前は確認できるので、余計な心配だとは思います。
加々美利治