大量出店「チョコザップ」の成否も左右する RIZAPグループ「株価ストップ安」の深刻背景
市場が失望した場面は今年3月にも見られた。瀬戸社長が行った立会外分売のときだ。立会外分売とは、取引時間外(立会外)に不特定多数の投資家にあらかじめ決まった価格で株式を大量に売り出すことをいう。 ■「不発」に終わった分売 3月7日、創業者で大株主である瀬戸社長が発行済み株式の約5%に当たる株を売却すると発表された。売却で得た資金を全額使って自身が持つ新株予約権を行使することにより、ライザップの資本を増強する算段だった。
ところが分売発表の翌日、ライザップ株はストップ安に。しかもその後の分売では、売りに出した株数の2割しか買われなかった。結果、資本増強額は22億円と、当初想定の約100億円を大きく下回った。 投資家は株式の需給悪化や希薄化を嫌気したとみられる。この結果を受けて瀬戸社長は、需給を乱すなど混乱を招いたとして、さらなる分売を当面行わないと発表した。また、「市場との対話」における反省点もあらわになった。 株を売却する瀬戸社長はインサイダー取引規制に抵触しないようにしておく必要があった。そのためライザップは、分売発表前に新サービスの公表などを半ば駆け込みで行った。
それらは総じてチョコザップへの期待を高め、ライザップ株の上昇につながった。それが一転、分売の発表となり、投資家に冷や水を浴びせる格好となった。 一連の過程を追うと、瀬戸社長を筆頭とする今のライザップ経営陣に欠けているものが見えてくる。市場とうまく対話する力と、それができる人材だ。チョコザップの大量出店費用を賄うためには備えておきたいものだった。 ■瀬戸社長が選ぶ「次の手札」は これまでチョコザップの出店費用は借り入れを中心に手当てしてきた。借入先は銀行だけにとどまらず、ライザップが傘下に持つ子会社にも広がっている。
さらに瀬戸社長が昨年8月以降2度に分けて、自身の資産管理会社から計100億円を劣後ローンでライザップに融資した。この100億円は瀬戸社長のまさに「虎の子」の資金だった。 「過去の分売で得たお金をそれこそ1円も使っていなかった。こういうときのために大事に取っておいた。それを今回目一杯出した」(瀬戸社長) このように手札を切ったうえで行った分売だったが、もくろみを大幅に下回った。今後のチョコザップの出店計画に影響を与えないとするが、資本増強額が想定を下回ったのはやはり痛い。
ライザップは、チョコザップの既存店から得る収入で新規の出店費を補う青写真を描く。ただ、早期にそこまでたどり着けるのかは予断を許さない。次の手札を用意しておく必要はあるだろう。 今後、投資家からの信頼を取り戻し、市場から資金を調達できるのか。はたまた瀬戸社長は、今まで避けてきた外部資本の受け入れも検討するのか。ライザップは大きな岐路を迎えているのかもしれない。
緒方 欽一 :東洋経済 記者