村上春樹「できればなるべく嫌なこと、つらいことは忘れて、良いこと楽しいことだけを覚えて生きていたいものですね」
<クロージング曲> 小室等「悲しくてやりきれない」
今日のクロージングの音楽は小室等さんのギター演奏です。「悲しくてやりきれない」、サトウ・ハチローの作詞、加藤和彦の作曲です。 * 今日の「村上の世間話」は、なんだか思い出話っぽくなっちゃいましたね。年齢を重ねると当然のことながら思い出すことも多くなってきます。それと同時に忘れることも多くなってきます。できればなるべく嫌なこと、つらいことは忘れて、良いこと楽しいことだけを覚えて生きていたいものですね。過去の傷をいつまでも抱えてくよくよしていると、人生はどんどんうす暗いものになっていきます。健康にもよくありません。 * ということで、今日の言葉は英国の古いジョークというか、パンチライン、つまり決め台詞です。 「笑うときだけ痛む」It only hurts when I laugh これには説明が必要ですね。戦場で1人の兵隊が胸に槍を突き刺されて倒れています。虫の息で今にも死んでしまいそうだ。戦友が駆け寄って尋ねます。「おい、大丈夫か? 傷は痛むか?」 すると兵隊は答えます。「いや、笑うと痛いだけだ」 僕は昔からこのジョークが好きで、ことあるごとによく思い出します。笑うときだけ痛いって言われても、胸に槍を突き刺されて死にかけているときに、人が笑う理由なんてまず何もないですよね。要するにどんな絶対的苦境にあってもめげないっていうか、あえてお笑いにもっていくっていうか、そういうタフな姿勢に惹かれます。みなさんもどうかそれぞれがんばってくださいね。 「笑うときだけ痛む」…… It only hurts when I laugh それではまた来月。 (TOKYO FM「村上RADIO~村上の世間話5~」2024年11月24日(日)放送より)