G-SHOCKの次はサ時計? サウナーを狙った「12分計」誕生の舞台裏
アナログで、必要最低限の機能に絞ったほうがいい
山下さんは、上司に「サウナ用の時計を開発したい」という旨を伝えたところ、GOサインが出たので、さっそく開発に着手した。当初は、若者に人気のリーズナブルな時計、いわゆる“チープカシオ”のバンドを取り外し、代わりに銭湯などでよく見かける「くるくるゴム付きのロッカーキー」を装着した。 試作品の見た目が斬新だったこともあって、周囲の評価はよかったものの、さすがにこのまま販売するのは難しい。温浴施設とのタイアップ商品であればアリかもしれないが、一般販売は厳しいという指摘が多かった。 次に考えたのは、デジタル時計である。時計と12分計を表示して、バンドは通常タイプのモノを装着した。この試作品が完成したあとに、消費者調査を実施する。デジタルがいいか、アナログがいいか。機能は多いほうがいいか、少ないほうがいいか。たくさんの人に話を聞いたところ、「アナログで、必要最低限の機能に絞ったほうがいい」という意見が多かった。 この結果を受け、アナログ仕様の表示にして、機能もシンプルに。バンドは通常のモノを装着していたが、「サウナを楽しむことや着脱のしやすさを考えて、銭湯などでよく見かけるカールバンド(くるくるゴム)を使いました」(山下さん) サ時計の開発にあたって、G-SHOCKなどで培った技術を応用したわけだが、苦労した点もある。「高温と高湿に対応しなければいけない」ことだ。サウナの中で使えるようにするには、どうすればいいのか。「熱さ」については、耐熱電池を採用することによって、解決した(※)。 一方の高湿についてはどうか。「通常の樹脂を使うと、湿気がケースの中に入ってくるんですよね。透湿性の低い樹脂を採用することで、ケース内の曇りを抑えました」(山下さん)。
G-SHOCKの“次の時計”
サ時計はこうして完成したわけだが、現時点(11月26日)で店頭にはまだ並んでいない。12月2日から応援購入サービス「マクアケ」で販売する。結果を見て、事業化を検討するようだ。 サ時計のアイデアは、社内の新規事業プログラムで採用された。同社は2020年から、さまざまな事業ネタを探していて、そのアイデアを元に商品化にチカラを入れている。2023年には、エレキギターなどの音を変化させるエフェクターを開発し、マクアケで販売。目標金額に達したので、現在は事業化するかどうか検討を進めているという。 カシオといえば、電子楽器、電子辞書、計算機などを扱っているが、主力事業は時計である。ただ、近年はヒット商品が登場していないこともあって、新規事業にチカラを入れているようだ。 さて、G-SHOCKの“次の時計”は登場するだろうか。 (土肥義則)
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