錦織圭、念願のトップ10入りが意味するもの
上半身裸の特権はともかく、お金にまつわる特典も紹介しよう。対象はトップ10ではなくシーズン最終ランキングの12人なのだが、マスターズシリーズ大会の出場状況に応じてボーナスが与えられるというシステムがある。ランキングごとにボーナス額は定められており、たとえば1位の選手が年間8つある必須大会の全てとツアーファイナルに出場した場合、その額はなんと250万ドル(約2億5000万円)! 仮に錦織が残りのマスターズシリーズも全て出場して、今の9位でシーズンを終えたなら25万ドル(約2500万円)を得ることになる。 しかしこれは、その選手が記者会見等の義務を怠らず、ATPが依頼するプロモーションイベントなども欠かさずこなしていることが条件だ。トップ選手にはその地位にふさわしい責任が伴う。具体例を一つ挙げると、選手会は年に数回ビッグトーナメントの前などに会議を開くが、本戦選手がこれを欠席すると罰金が課せられ、その額はトップ10が最も高く1万ドル(約100万円)と定められている。ちなみに11位から25位は5000ドル、100位以下だと500ドルとなる。 こう見ると、確かにランキングは何においても基準になるものだ。だからこそランキングにまつわるプレッシャーは大きく、上る階段に終わりはない。錦織は「これからもっといいテニスをして、このポジションを守っていきたい」と言ったが、次の目標が「トップ10維持」から「トップ5入り」と明確に変わるまで時間はかからないだろう。認められ、膨らんだ自信はさらなる向上心を生み、その姿がまたファンを惹きつける。グランドスラム優勝という夢も現実味を帯びてくるに違いない。その存在はテニス界の発展に影響する貴重な財産だ。11位と10位で何が違うのか? 大事なことは金や待遇の話ではない。トップ10プレーヤーとは、自分のテニスが自分のものだけでも自国のものでもなくなった、世界で選ばれしテニスプレーヤーを意味する特別な呼称なのである。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)