合法化が進むアメリカで「大麻の密輸・密売」が激増しているのはナゼか…元マトリ部長が説く“大麻合法化”の不都合すぎる真実
11月5日の大統領選で再起を目指す米共和党のトランプ前大統領。僅か2ヵ月で2度も命を狙われるなど、何かと動向が気になるところだが、8月31日に打ち出した方針が世論を驚かせている。トランプ氏は自身が居住するフロリダ州で、成人(21歳以上)による嗜好(娯楽)用大麻の所持を容認(3オンスまで)する考えを表明したのだ。この件を受けて、元厚生労働省麻薬取締部部長の瀬戸晴海氏が、アメリカをはじめ各国で進む「大麻合法化」の“負の側面”について解説する。(全2回の第1回) 【写真】一見“美味しそうな”キャンディー、グミ、焼き菓子には“大麻”が練り込まれている。子どもの誤飲事故が急増し、NY市当局も〈重度の大麻中毒は人工呼吸器を必要とする場合があります〉と注意喚起 ***
トランプ氏の発言には、若者やリベラル層を意識した“中道寄り”の選挙アピールとの批判もある。その一方で、年々規模が拡大する正規の大麻経済(医療用大麻を含め、米全土で300億ドル=約4兆3000億円と推計)を無視できなくなったのでは、との見方もあるようだ。実際、フロリダでは大統領選に併せて嗜好用大麻の合法化を問う住民投票が行なわれる。 トランプ氏は自らが設立したSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」にこのようなコメントを投じている。 <賛否はあるようだが、大麻の嗜好目的使用は、住民投票を通じて承認されるだろう> <個人の使用目的で少量の大麻を所持している成人を逮捕や拘禁する必要はない(摘発に税金を使う必要はない)> <大麻の臭い対策(公共の場での使用を禁止する州法の制定)も行なう必要がある> 内容は既に合法化に踏み切っている他州の大麻政策を支持するもので、とりわけ目を引くものはないが、米大統領選と大麻問題が絡んで相乗効果を生んだのか、このトランプ発言が日本でも反響を呼んでいるのだ。
「冷静な意見」が増えつつある
たとえば、この件を報じた9月1日のYahoo! ニュースには、<今後数年間、大麻の法的地位に関する世界的な議論は、間違いなく興味深い時期になるだろ(後略)><先日の電気自動車や郵便投票の話と同じように、思い付きのような言葉なので、どこまで本音か分らないところ(後略)――>といった有識者(大学教授等の専門家)の投稿をはじめ、なんと1600件以上のコメントを確認することができた。 なかでも私の目に留まったのは、次のコメントだ。 〈アメリカの内政の話はアメリカ人が決めれば良いことだと思うので、個人的には米国内で合法でも違法でもどちらでも良いと思っています。ただし、どちらになってもそのアメリカの考え方を日本に押しつけたり圧力をかけたりはしないでいただきたい。そこが重要だと思っています〉 一般読者のコメントと推察するが、思わず「なるほど」と納得させられてしまった。これが5年前なら「大麻の解禁は世界の潮流だ(※世界で嗜好用の大麻を合法化しているのは僅か9ヵ国だが)」、「海外へ行けば大麻の使用はあたりまえだ」、「日本は厳罰主義で遅れている」「大麻はアルコールやタバコより害が少ない」「大麻に害があるなら合法化されるはずがない」といったコメントが飛び交っていたことだろう。 日本の現行制度を批判し、感情的かつ急進的に大麻自由化を求める意見が目立ったように記憶している。だが、ここ最近は、こうしたコメントのように冷静で客観的な見方も増えてきたという印象を受ける。これは大麻問題が少しずつ理解されてきた証でないかと、私は思っているのだが……。