アイドルや歌ものアニメ絶滅期に生まれた名作 『まほあこ』すべて剥き出しの感動ライブ
毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。2月26日から3月3日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部) 【写真】『治癒魔法の間違った使い方』 実はこの冬クール、近年では珍しくアイドルやバンドなどの“歌”をメインに扱ったTVアニメが存在しないことに気付いている人もいるでしょう。それもこれも『ささやくように恋を唄う』の放送が4月に延期されたためだし、「いや、『スナックバス江』は歌ものだろう!」と言われればそうかもしれませんが、こんな事態は『ラブライブ!』シリーズがブレイクして以来初めてかもしれません(見落としがあったらごめんなさい)。 この緊急事態の考察についてはまた別の機会があれば書くとして、今週はそんな冬クールに生まれた珠玉のアイドルライブ回から紹介します。 ●ロコ様“拷問”の時間です『魔法少女にあこがれて』 魔法少女に憧れながらも悪の組織の女幹部となった少女・柊うてな(マジアベーゼ)が、サディスティックに魔法少女と戦うちょっとエッチなコメディアニメで、大体酷い(褒め言葉)話が続いていましたが、第9話は絶品でした。今回戦う相手は、ベーゼが所属する組織から離反したロード団の阿古屋真珠(ロコムジカ)と姉母ネモ(ルベルブルーメ)のふたりです。 このロコはアイドルを目指している女の子。しかし本人は自覚がないものの、歌唱力は「絶妙にいじりにくい程度にヘタ」。彼女が野外ステージでファンを相手にライブをしていたところ、ベーゼたちがその邪魔をしに現れます。ルベルを人質にしたベーゼは、ロコに対して服を脱いで歌うように要求。これに従ったロコは、これまでの独りよがりな歌唱と違い、露出によって観客の目を気にするようになったためか上手に歌えるようになりました……という心温まるお話です。 自己の開放の象徴として裸になるのはアイドルアニメではなくもない話ですが、それと本作のSM要素が絡むのがお見事。いや、野外で全裸ライブという絵面はとても酷いのですが、妙な理屈の通り方に素直に膝を打ってしまいます(第8話で同じくロコムジカを全裸にした上司とベーゼの対比や、妙に統制が取れていたロコファンの理由なども美味しい)。 今期はロボットものの『SYNDUALITY Noir』が歌の要素が強く、『カードファイト!! ヴァンガード Divinez』でもアイドルのヒロインが登場しますが、これを超えるライブ回は誕生するでしょうか。 ●決戦を前に充実の過去回想『治癒魔法の間違った使い方』 前回、今期の助演男優賞は『ようこそ実力至上主義の教室へ』の山内だろうという話を書いたところですが、助演女優賞は『治癒魔法の間違った使い方』のローズだということに異論がある人も……さすがに多いかもしれませんが、そう推したくなるくらいの存在感を見せています。ローズは治癒魔法使いながら戦闘能力が非常に高く、これまで同じ治癒魔法使いの主人公・ウサトの師匠としてとにかく延々と特訓してきました。 そんな彼女の、かつて王国騎士団の大隊長を務めていた過去が第8話と第9話を通じて語られます。ここでローズにとっての悲劇と再生が語られ、それだけでも単純に感動的なのですが、これが描かれたタイミングがよかった。これまでのウサトに対する厳しい態度に込められた思いを改めて強く感じられ、さらに(おそらく次回から始まるであろう)魔王軍との戦いに向けた因縁も描かれ……と、いやが上にも盛り上がる決戦準備回でした。 ●今回もアニ×パラは面白い 人気マンガや小説とパラスポーツがコラボするショートアニメ・アニ×パラシリーズの最新作が公開されましたが、第17弾となる今回は藤田和日郎先生原作の人気作『うしおととら』と、パラアーチェリーがコラボ。5分で終わるため詳しくは動画を観ていただきたいのですが、最終決戦の白面の者との戦い(キャストも2015年版アニメと一緒)とパラスポーツをそう絡めるのかと納得の仕上がり。BURNOUT SYNDROMESによるテーマ曲もあり、小品ながら熱いアニメでした。
はるのおと