中国の「巨大タワマン団地」なら爆走できる…中国発の「電動スーツケース」が日本の道路に次々と押し寄せるワケ
■「使い方の違い」を考慮せずにとりあえず売る 中国で売り出されたガジェットが日本ではフィットしないケースはほかにもある。例えば中国で野外キャンプが人気となるや、大容量バッテリーやプロジェクターを持っていって大自然の中で動画を見たり音楽を流したりしはじめた。そのためキャンプというのは、いろいろ電気製品を持っていって賑やかに楽しむのが中国式スタイルとなっている。 他方日本のキャンプはというと、タレントのヒロシがほそぼそと焚火を焚いてキャンプ飯を作るような、大自然で静かに寝泊まりするスタイルで、中国のようにうるさくしようものなら、周りの利用者に迷惑がかかる。 こうした使い方の違いを考慮せずに、中国企業は商品を世界展開する。 野外活動用バッテリーについては、日本人に使用してもらうシチュエーションとして、例えばどこかの空き家を数日借りて電気を通さずにバッテリーだけで暮らすとか、災害時の非常用電源として保持しておくというソリューションが提案されている。 一方電動スーツケースは、前述したような超巨大なショッピングモールがほとんどなく、歩道も狭い日本で使おうとすると他人に迷惑がかかるため、使えるシチュエーションは限られてしまう。 ■「使い道のない商品のお騒がせ事件」は今後も起こる 今回の電動スーツケースのような、面白いけれども利用環境や習慣が違うために中国で使えても日本では使いどころが難しい製品が、今後も日本にやってくるだろう。円安による訪日のしやすさが転じて、中国初のさまざまなハイテク製品を抱えた中国人が日本を訪れるようになり、今回のような新製品に関するお騒がせニュースが発生し話題になるかもしれない。 中国のデジタル製品をウォッチしている筆者でも、今後何が中国で出てきてはやりだすのか想像できないが、妙な製品が流行るようなことがあれば情報発信していきたい。 ---------- 山谷 剛史(やまや・たけし) 中国ITライター 1976年生まれ。東京都出身。東京電機大学卒。システムエンジニアを経て、中国やアジアを専門とするITライターとなる。現地の消費者に近い目線でのレポートを得意とし、バックパッカー並の予算でアジア各国を飛び回る日々を送っている。著書に『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本』(星海社新書)、『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(星海社新書)、共著に『中国S級B級論―発展途上と最先端が混在する国』(さくら舎)などがある。 ----------
中国ITライター 山谷 剛史