グーグルがクッキー廃止に向け一部制限を開始
クッキーのメリットとデメリット
米アルファベット傘下のグーグルは1月4日に、自社ブラウザー「クローム」のユーザの1%に対して、クッキー(Cookie)を制限するテストを開始した。今年の年末までには、全ユーザについてクッキーを廃止する予定だ。 クッキーは、ユーザがWebサイトにアクセスした際に付与されるテキストファイルのことで、そこにはユーザのログインIDやサイトへのアクセス履歴、訪問回数などの情報が一時的に保存される。 クッキーは、Webへのアクセスや操作を便利にしている。たとえばSNSなどでは、IDとパスワードを入力して一度ログインしたサイトについては、しばらくしてから再度アクセスする場合でも、IDとパスワードを再入力しなくても入ることができる。またショッピングサイトでは、再度アクセスした場合にもカートに入れた商品が消えずに残っている。 他方で、このようにユーザの利便性を高める役割を持つクッキーには、問題点も多く指摘されてきた。 クッキーでは、Web上の行動履歴から個人の趣味嗜好や購買動向の捕捉が可能となる。それらの情報が流出したり、売買されたりする危険性がある。消費者団体は、治療歴など重要な情報を含む個人のデータの収集に使用される可能性があり、プライバシーを侵害するものだと主張している。 また、そうした情報をもとに、一度検索した商品やキーワードに紐づいた過剰なパーソナライズ広告に追跡され、不快に感じるユーザもいる。
グーグルのクッキー廃止は広告仲介業者に大きな打撃
そうしたなか、過去数年間にクッキーを制限する動きが広がってきた。モジラやアップルは、それぞれのブラウザー「ファイアーフォックス」と「サファリ」でクッキーを制限するようになった。グーグルも2020年にクロームでクッキーを廃止する計画を打ち出したが、その後、たびたび計画を先送りしてきた。グーグルの動きが他社よりも遅れたのは、広告仲介業者からの強い反発に直面したためだ。 広告仲介業者は、マーケターの顧客絞り込みや広告の費用対効果の測定を支援する上で、クッキーに大きく依存している。分析企業スタットカウンターによると、クロームは世界のインターネットトラフィックの65%を占める最大のブラウザーだ。これは、サファリの3倍に上る。そのため、グーグルがクッキーを制限あるいは廃止する場合、年間6,000億ドル(約86.5兆円)のオンライン広告業界にとって、非常に大きな打撃となる。 デジタルマーケティング導入支援の米アップシティの調査によると、従業員が100人~数百人規模の中小規模の企業で87%が、サード・パーティ・クッキーが利用できなくなることに懸念を感じていると回答している。 サード・パーティ・クッキーとは、訪問したWebサイトのドメインが発行するクッキー、つまりファースト・パーティ・クッキーではなく、第三者ドメインから発行されるクッキーのことだ。Webサイトに掲載されている広告などから発行されることが多く、サイトを横断してユーザの追跡を行うことを可能とする。グーグルが廃止を計画しているのは、このサード・パーティ・クッキーである。