政権枠組み、与野党神経戦 自民、国・維に期待 野党結集見えず・衆院選〔深層探訪〕
衆院選で自民、公明両党が過半数を割ったことを受け、特別国会での首相指名選挙に向け、与野党の多数派工作に焦点が移った。自民は「是々非々」路線を掲げる国民民主党や日本維新の会の協力に期待をにじませるが、派閥裏金事件への対応などでハードルは高い。ただ、躍進した立憲民主党を中心とした「非自民」結集も見通せず、世論もにらんだ各党の神経戦が続く。 【ひと目でわかる】衆院選2024獲得議席数 ◇「逆ねじれ国会」 「それぞれの党の主張に対し、採り入れるべきは採り入れることにちゅうちょがあってはならない」。28日、衆院選大敗のショックが続く自民党本部で記者会見した石破茂首相は、政権維持に向け野党との協調路線にかじを切る方針を明言した。 衆院選の結果、「自民1強」は一変。「数の力」を背景に自公主導で国会審議を進めた前提は崩れ、今後は法案成立などで野党の協力が欠かせなくなった。 「逆ねじれ国会だ」。省庁幹部は2009年の政権交代前夜の自公政権や、旧民主党政権が参院で少数派転落を機に機能不全に陥った経緯を念頭に、衆院で自公が過半数割れした状況をこう表現した。 ◇拭えない怒り 局面を打開するため、自民は無所属以外に野党の一部へウイングを広げたい考えだ。視線の先には、23年度補正予算に賛成するなど政策によって協力を得てきた国民、維新両党がある。 国民の玉木雄一郎代表は28日のBS日テレ番組で、自民との連携に関し「幹事長レベルでは一定の接触をしている」と述べ、協力要請があったことを示唆。自民の森山裕幹事長は維新幹部と電話し、「これからも連絡を取り合いましょう」と伝え、国会運営などで連携を深める考えをにじませた。 もっとも首相が会見で「『政治とカネ』で国民の怒りが払拭されていない」と認めるように、国民、維新両党との距離を縮めることは容易ではない。来年夏には参院選を控える中、両党は連立入りの可能性を否定。公明幹部は「パーシャル(部分)連合でさえ、簡単にはいかないだろう」との見通しを示す。 ◇「政治改革」で連携模索か これに対し、野党第1党の立民の野田佳彦代表は、首相指名選挙での「野田首相」実現に向け、野党各党と歩調を合わせる考えを表明した。しかし、今のところ非自民勢力の結集は見通せないのが実情だ。 立民内では維新への抵抗感を示す向きも少なくない。共に連合を支持団体とする国民とも、憲法改正や原発政策などで隔たりがあり、国民中堅は「立民との違いを訴えたから今回の大躍進につながった。組むことはない」と断言する。 一方、衆院選で野党各党は政策活動費の廃止や企業・団体献金禁止など、「政治とカネ」の見直しを唱え、訴えには共通項が多く見られた。 政府関係者は「政治資金規正法の再改正で野党が足並みをそろえれば、国会は一気に波乱含みとなる」との見通しを示す。「今回は第一歩。参院選までに『非自民政権』の実現性を高めねばならない」。立民中堅はこう話した。