新型クラウン・スポーツの走りに迫る!!! トヨタの考える“スポーティ”とは?
フルモデルチェンジしたトヨタの新型「クラウン・スポーツ」の魅力はいかに? 小川フミオがリポートする。 【写真を見る】新型クラウン・スポーツの細部(74枚)
スポーツならではのキャラクター
新型クラウンは大胆にも、4つのバリエーションが設定されている。そのなかで、走りの楽しさを提供しようというのがクラウン・スポーツだ。 2023年10月、クラウンシリーズに追加されたクラウン・スポーツは、先行して発売されたクラウン・クロスオーバーと、基本プラットフォームを共用。フロントエンジンとモーターを組み合わせたドライブトレインも同様だ。 ホイールベースは、よりスポーティ性を追求した結果だろう、2770mm。クラウン・クロスオーバーの2850mmよりは短い。 ホイールベースを持つプラットフォームもクロスオーバーと共用。まず、クロスオーバーと同じスペックスの2.5リッターエンジンを使ったハイブリッドが発売され、追ってプラグイン・ハイブリッドが登場する。 今回乗ったのは、スタンダードなハイブリッドモデル。スタイリングは、クロスオーバー型のハッチバックだ。 クロスオーバーというのは、ちょっとルーフの前後長を伸ばすとともに、リヤクオーターウインドウを設けてステーションワゴン的な雰囲気もだしている。 「ハンマーヘッド」と、トヨタのデザイナーが呼称する縦幅の狭い灯火類と、大きく見えるグリルを中心としたフロントのエアダムによる、2階建てのフロント部分がまず目をひく。 全体を見ると、21インチ径のホイールと組み合わせたタイヤの存在感と、力強く張り出したフェンダーなど、官能性を強く意識させるデザインが、スポーツならではのキャラクターになっている。
ハリアーの兄貴分
ドライビングの印象は、たしかに「走りを意識した」と述べる、開発者の言葉がすぐ頭に浮かんだ。 前輪駆動をベースに、後輪を電気モーターで駆動するオンデマンド型4WDシステムは、負荷や走りかたに応じて前後の駆動配分を自動調整する。前輪への100%のトルク配分から、後輪へ80%まで、かなり幅が広い。これで、コーナリング性能などの向上を狙っている。 スポーツにはさらに「DRS(ダイナミック・リアステアリング)」という後輪操舵機構がそなわる。高速道路では前輪と同位相(同じ方向)に後輪が向くことで仮想ホイールベースを長くして、レーンチェンジの際などの走行安定性を高める。 いっぽう市街地の十字路やコインパーキングなど狭めの場所では、前輪とは逆の方向に後輪が向くことで、小まわりが効く。メルセデス・ベンツ車のように極端なほど角度がつくことで慣れないと焦る、ということもなく、操縦しやすい。 スポーツのよさは、安定した走行性にあるようだ。「クラウンというブランドのイメージを飛び越えないような設定にしました」、開発エンジニアが私に教えてくれたとおりで、適度にスポーティなのだ。 ハイブリッドゆえ電気モーターのトルクを利して、発進加速はよい。そこは、スポーツのイメージどおり。そのあとの加速性もいいけれど、すばやく加速するよりも、ジェントルにアクセルペダルを踏み込んでいったほうが、過剰なエンジン音も抑えられ、気持ちがいいと思った。 足まわりの設定はやや硬め。さきのDRSとともに、コーナリング性能はよくて、速度が高めでも不安感はない。というか、楽しいと感じられるはず。 インテリアで目をひくのは、ダッシュボードに設置された大型のモニタースクリーンだ。デザイン的にすぐれているのは、運転席と助手席をはっきり分けた色づかい。 たとえばサンドベージュなる内装を選ぶと、運転席側はブラック、助手席側はそのサンドベージュと色分けされている。「機能に応じて分けました」とは、担当したデザイナーの言葉だ。 全長4720mmと比較的余裕あるサイズの車体であり、ホイールベースは先述のとおり2770mmと、比較的ショートであるものの、それでも十分。パッケージングがうまく、後席も空間的余裕が十分にある。ハリアーの兄貴分というかんじだ。 車体色には、「マスタード」という黄色や「エモーショナルレッド」という赤色も設定がある。ランボルギーニ「ウルス」のように、運転が楽しめるSUVが欲しいひとにアピールすると思う。 このあと、スポーツにはプラグイン・ハイブリッドが登場する。それもかなり気合いの入った仕上がりのようで、価格差は別として、較べてから購入を検討するのも悪くないかもしれない。 いろいろなことが楽しみになるクルマだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)