北朝鮮の挑発の「情報公開」渋っていた韓国軍当局、急に自ら説明…なぜ?
[クォン・ヒョクチョルの見えない安保]
「回答は制限されます」 国防部の担当記者が国防部の当局者や合同参謀本部(合参)の軍人に質問すると、よくこう言われる。とりわけ北朝鮮がミサイルを発射した際に具体的に機種や性能を問うと、機械のように「回答は制限される」という返事が返ってくる。合参は、北朝鮮のミサイルの飛行距離だけを記者たちにショートメッセージで公開し、高度、速度はセキュリティーを理由に公開していない。それとは異なり、日本の防衛省は北朝鮮のミサイルの飛行距離、高度、速度を公開している。北朝鮮がミサイルを発射した際、国防部の担当記者たちは「北朝鮮のミサイル情報を日本の防衛省の発表を根拠として報道すると国のプライドも傷つくし、軍に対する国民の信頼も落ちる」と言って追加説明を要請するが、合参は「詳しい情報を公開すると、北朝鮮に対する情報収集能力が露呈する」として応じてくれない。 北朝鮮は先月31日、1発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を東海(トンヘ)上に発射した。北朝鮮のICBMの発射は今年初めてで、発射は昨年12月18日の固体燃料ICBM「火星18型」以来、約10カ月ぶり。当時は、5日後に控えた米国の大統領選挙や北朝鮮軍のロシア派兵などが絡み合い、敏感な時期だった。合参はその日午前の定例ブリーフィングで、ミサイルの高度や飛行時間などについては直接言及しなかった。同日午後2時、合参の作戦部長を務めるアン・チャンミョン陸軍少将は、放送局のカメラの前で北朝鮮に対する警告声明を発表した。 その日、国防部の担当記者たちは北朝鮮のICBMについての具体的な情報分析の結果を説明するバックブリーフィングを合参に要請したが、実現しなかった。バックブリーフィングとは、公開ブリーフィングとは異なり、放送局のカメラを入れず、合参の当局者が実名を明らかにせずに記者団に説明するもの。 先週まではセキュリティーを名目に、国民の知る権利に対し硬直した対応をしていた合参が、今週に入ってから急に親切になっている。合参は4日午後、北朝鮮が南北連結道路京義(キョンウィ)線と東海(トンヘ)線に対戦車壕(戦車の進撃を阻止するための穴)を掘り、土を積み上げて盛土の丘(防壁)を作ったと発表するとともに、3枚の写真をメディアに提供した。この時、記者団は説明を要請しなかったが、合参の関係者が同日午後に自ら記者室を訪れ、説明を自ら申し出た。この日午前11時までは事前予告のなかった突然の説明だった。 合参の関係者は、「北朝鮮は作業が終わった今月1日、東海線の盛土の上に北朝鮮の国旗である人民共和国旗(人共旗)をかかげて写真を撮影し、その日のうちに人共旗を撤去した」、「そこが自分たちの土地だということを示すための『ショー』だと考えている」と語りつつ、人共旗を掲揚している写真も記者団に提供した。合参の関係者は、対戦車壕や盛土の工事は軍事的な目的を持ったものというより、北朝鮮の主張する「南北連結の完全遮断」措置が完了したことを告げる「見せるための工事」だと説明した。 異例の合参による自発的な説明について、ある国防部担当記者は、「合参は北朝鮮の動きについて、軍事的威嚇ではなく見せるための工事だと評価したが、『見せる』という北朝鮮の意図に乗らないようにするためには、合参は無視で対応するのが正しいのではないか。合参は記者団に説明し、写真まで公開したため、北朝鮮が狙った『見せる』という効果を高める結果を生んだ」と述べた。 北朝鮮は今月5日午前、数発の短距離弾道ミサイルを東海上に発射した。北朝鮮の短距離ミサイルはICBMのような戦略兵器ではないうえ、北朝鮮が比較的頻繁に発射するものだ。そのため、北朝鮮が短距離ミサイルを発射した際、合参は担当記者に主な事実関係をショートメッセージで伝えるにとどまった。 合参は5日午前、異例にも北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射に対する立場を表明する声明を放送局のカメラの前で発表し、午後には記者団にバックブリーフィングを自ら申し出た。合参はナム・ギス公報副室長(海兵隊大領、大領は軍の階級)名義の声明で、「(韓国は)決して座視せず、これからのすべての結果に対する責任は北朝鮮にあることを改めて警告する」と述べた。 合参の関係者は近ごろ相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイル発射について、「ロシア派兵が明らかになった中、派兵に対する関心を薄めるとともに、局面の転換を狙ったもの」だと解説した。合参の関係者は「極超音速ミサイルの発射準備が進んでおり、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も(発射準備が)咸鏡南道新浦(シンポ)一帯で続けられている」とし、普段は「情報事項」だとして言及を控えていた北朝鮮軍の動きも具体的に公開した。 破壊力の強い戦略兵器であるICBMの発射の際には記者団に要請されたバックブリーフィングを断った合参が、北朝鮮の通常兵器である短距離ミサイル発射後にバックブリーフィングを自ら申し出たのはなぜか。合参の関係者は「北朝鮮がロシア派兵を行い、米大統領選挙も差し迫っていた。北朝鮮が南北連結道路の爆破に続いて対戦車壕、盛土の工事を行い、ICBMに続いて短距離弾道ミサイルをすぐに発射したのは異例」だと述べた。最近の厳しい国際情勢、北朝鮮の連続する挑発が、合参が突如として親切に説明するようになった理由だということだ。 すると、ある担当記者が尋ねた。「合参は北朝鮮の相次ぐ挑発の意図を『局面転換』だと説明しているが、南北いずれも局面転換に努めている気がする」。「キム・ゴンヒ女史問題」や「ミョン・テギュン氏に関する疑惑」などに注がれる国民の関心をよそに向けるため、これまでは「制限される」といって渋っていた北朝鮮の軍事情報を制限なく公開しているのではないかと疑ったのだ。合参の関係者は「軍人は政務的な判断はしない」と答えた。 クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )