『ナポレオン』は文化の盗用?国民的英雄を演じる米国人俳優にヨーロッパの批評家が憤慨
リドリー・スコット監督『ナポレオン』とマイケル・マン監督『フェラーリ(原題)』に、文化の盗用疑惑が浮上している。 各作品では、フランスの皇帝・ナポレオンをホアキン・フェニックス、「フェラーリ」の創業者、エンツォ・フェラーリをアダム・ドライバーが演じた。 しかし、国民的英雄役にアメリカ人俳優を起用することにフランス・イタリアの批評家は憤慨。さらに追い打ちをかけるのは、劇中で彼らが話すのが英語ということだ。 「なんとも罪深い」と、イタリアの批評家は『フェラーリ』のレビューで綴った。「(ドライバーら出演者に)英語、それも胡散臭いイタリア訛りを話させたのだ」 また、「文化の盗用だ」と怒り心頭なのは、『ワールド・ウォー Z』などで知られるイタリア人俳優のピエルフランチェスコ・ファヴィーノだ。 「サンディエゴ出身の男の代わりに、トニ・セルヴィッロらイタリアの名優を起用することは難しくなかったはず。(アメリカ人の起用は)軽蔑的な態度だと思う」 『スパルタカス』から『グラディエーター』まで、外国の偉人をハリウッドの著名俳優が演じる傾向には長い歴史がある。これまで各アワードでも、賞を受けてきた。 「文化の盗用」的なキャスティングは、デリケートな問題だ。『マエストロ: その音楽と愛と』のブラッドリー・クーパー、『オッペンハイマー』のキリアン・マーフィらも、ユダヤ系の人物を演じたことで論争を招いた。 業界は国際化が進んでもなお、ジャン・デュジャルダンら世界のトップ俳優の起用を断念。それゆえ、自分たちの歴史が略奪されていくヨーロッパ人は激怒しているのだ。 一方で、フランスの批評家のヤル・サダット氏は「(『ナポレオン』などの作品には)文化的な優位性がある。我々の歴史の重要性を示すには、ハリウッドが必要なのだ」とも述べている。 ヨーロッパの観客の大半はこれらの作品を吹き替えで鑑賞するとみられる。よって、登場人物が英語を話すという指摘は実際には問題にならないかもしれない。 伊紙『ラ・レプッブリカ』の批評家は、次のように伝えた。 「(『フェラーリ』は)素晴らしい作品だが、馬鹿げたイタリア語訛りの英語を話すオリジナル版は変な感じがする」「吹き替えで観てほしい。ずっとマシになるから」