『夏目アラタの結婚』映画化OKの決め手は“真珠の歯”?原作者、乃木坂太郎が舞台裏を明かす!
コミックス累計発行部数260万部を突破した乃木坂太郎の同名漫画を、「TRICK」や「SPEC」などで知られる堤幸彦監督のメガホンのもと、柳楽優弥と黒島結菜の共演で実写映画化した『夏目アラタの結婚』(9月6日公開)。このたび原作者である乃木坂からコメントが到着。映画化にOKを出した理由や、映画オリジナルのクライマックスを迎えることについての原作者としての思いが明らかになった。 【写真を見る】映画オリジナルのクライマックスは原作者自らの提案?「キャラクターは生き物」 勤務態度は不真面目だが正義感が強い元ヤンキーの児童相談員の夏目アラタ(柳楽)は、日本中を震撼させた連続バラバラ殺人事件の犯人で、死刑囚の“品川ピエロ”こと品川真珠(黒島結菜)にプロポーズをする。その目的は、遺族である少年からの依頼を受け、行方不明となっている遺体の首を探すためだった。毎日1回20分の駆け引きに翻弄されていくアラタ。やがて真珠から「誰も殺していない」という言葉が飛びだし…。 2019年に「ビッグコミックスペリオール」で連載が開始されるや、実写化のオファーが相次いでいたが、乃木坂はそのすべてを断っていたという。その理由は、真珠の特徴であるガタガタの“歯”。「漫画の連載開始の際にも、ヒロインがこの歯で大丈夫なのかと危惧する意見がありました。ですが、あの『歯』は自分の人生を奪われ続けた真珠の存在証明の象徴なので、作者としてはそこは絶対に譲れない点だったのです」。 実写化するとなると、演じる女優のイメージを損なう可能性もある真珠の歯。案の定、それまであったオファーはその再現に躊躇しているような企画ばかり。そんななか、本作の古林茉莉プロデューサーは、歯の再現と可能な限り原作に寄り添った映像化にすることを断言。「メモ帳を手に、熱心にキャラクターやテーマについて質問してくる姿勢に、作品を預けてみようかなと決心しました」と乃木坂は振り返り、「真珠を演じる方はいないと思っていたので、黒島さんには本当に感謝です」と語った。 真珠の歯に加えてもう一つ大きな課題が残されていた。それは脚本に着手する時点で原作漫画が未完だったこと「ラストまでの構想はあったのですが、今後の展開について話してしまうと自縛に陥る可能性が高い。キャラクターは生き物なので、心情次第で展開が変わることはよくあるのですが、『こっちの展開の方が良いけど、映画の方には違うこと言っちゃったから変えづらいなあ…』なんて悩むのは、漫画を追いかけてくれている読者には不幸なことだと思うのです。そんなわけで映画のチームには後半の展開を自由に作っていただくことにしました」と、原作者自ら映画独自の展開で進めるよう提案したという。 「細かい点で原作者の意見を求められましたが、そこはすべてお任せしました。誰かの意見で物を作るのって自分は大嫌いだから、映画のチームにもそうあってほしかったんです」と明かし、出来上がった作品について「面会室の掛け合いを見ると、二次元が三次元になる化学変化が起こっていて、なるほどなと膝を打ちました」と絶賛。さらに主題歌であるオリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」の歌詞を、作品の世界観に合わせて自ら意訳監修を務めるなど、隅々まで映画化に協力した乃木坂は「映画に関わったすべての方々に感謝します。漫画と映画のふたつの『夏目アラタの結婚』、どちらも楽しんでいただけたら幸いです」と太鼓判をおした。 文/久保田 和馬