重さ20キロ以上、凍った牛糞入った籠を背負う遊牧民の老女 その理由は?
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚しい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
冬のもう一つ大切な作業は牛糞集めだ。夕方になると牛が家の近くに戻り、寝泊りする。朝、牧草地に出かけてみると、そこに大量の凍った牛の糞が落ちている。これを家族みんなで集め、一箇所に小山にしておく。以前(【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第2回)でも書いたように、春になってこれが乾燥されて燃料になる。 私が子供の時は冬休みに田舎に帰り、毎朝この作業の手伝いをしていた。そのころは年配の女性は、「アルグ」という柳条で作った籠に凍った牛糞を入れ、背負って、日当たりが良い場所に集めておく。 しかし、今はこのアルグを使う若者は殆どなく、二輪車或いは三輪車のオートバイを使うのが一般的になった。長年の取材中、私は一度だけ、60歳すぎのお婆さんがアルグを背負って、牛糞を集めているのを見て、とても感動した。ちなみに、アルグいっぱい牛糞の重さは20キロをくだらない。 さらに、羊とヤギの場合は、羊囲いの中で毎日たくさん糞を落とす。羊の糞は牛と違って、葡萄ほど小さな粒々である。これが羊蹄によって踏み潰され、固まって厚い層を成す。これを冬の間、スコップのようなもので厚さ20センチ、幅30センチぐらいに切り落とす。レンガのように羊小屋作ることもできる。牛糞より、温度が高く、長持ちするので、冬はよく使われる。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第5回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。