大規模農業経営と環境を両立 消費者や企業とつなぐ「ローカル・ゼブラ」法人が奮闘 北海道
農業の持続可能性を高めたい うらほろ樂舎
北海道浦幌町で持続可能な地域・社会づくりを目指す一般社団法人「十勝うらほろ樂舎(がくしゃ)」は、大規模経営でも不耕起栽培や農薬の削減による「環境再生型農業」を確立しようと、今年度から農産物の価値を企業や消費者とつなぐ事業に取り組んでいる。同町など十勝地方の3町で農家5戸と連携。単位収量の追求だけでなく、土や環境を守る付加価値と省コストで経営を守る仕組みを目指す。 環境再生型農業は、不耕起栽培で土壌の流出を防ぎつつ、燃料費や人件費を抑制。農薬の削減でコストや環境負荷を低減する。うらほろ樂舎は、こうした付加価値を企業や消費者に広め、十分な対価を得る関係をつくる。 連携する農家では、主にジャガイモや小麦、トウモロコシの他、カボチャ、ブロッコリー、トマト、ダイコンなどを栽培。意見交換会などを開いて、環境再生型農業にどんな作物がどの畑で向いているかを調べている。趣旨に賛同してくれる企業には自社での消費や流通網で協力してもらい、消費者には農産物への理解を深めてもらう。 大規模経営の持続可能性に取り組むのは、うらほろ樂舎が地域おこし協力隊の受け入れ協力や学生の農業体験などを進める中で見えた課題がきっかけだ。大規模経営農家から、土壌の保水力低下や農業従事者の減少、肥料や農薬、燃料の高騰の悩みを多く耳にした。 「環境再生型農業ならば、不耕起や減農薬で土壌を修復しつつ経費削減や高付加価値が実現できるのではないか」(山内一成代表)と考えて検討を始めた。山内代表は「土地の持つ背景の違いや大規模生産とのバランスを取るなど手探りだが、農家の選択肢を増やし、農業の持続可能性を高めていきたい」と意欲を示す。 浦幌町の有機農家で事業に協力する伊場満広さん(46)は「人口減や燃料、肥料の高騰もあり、規模拡大でやってきた農業が今まで通りできるのかと疑問だった。環境再生型農業で地域の農業もコミュニティーも持続できるきっかけになってほしい」と期待する。
地域課題の解決めざす
こうした地域の課題解決と持続的な繁栄を目指す企業は「ゼブラ企業」と呼ばれ、競争して利益を追求する「ユニコーン企業」に対する動きとして経済産業省が育成に向けて基本指針を策定している。 「ゼブラ企業」のうち、地方を拠点に活動する企業は特に「ローカル・ゼブラ」と定義。中小企業庁が今年度から実証事業を進める。 うらほろ樂舎は全国で選定された20地域のうちの一つ。来年2月の報告書提出に向け、環境再生型農業を通じた生産現場と企業・消費者の連携で、農業の持続性可能性を高める活動を実践している。 (後藤逸郎)
日本農業新聞