自衛隊と圧倒的な差、中国人民解放軍の近代化 戦略3文書策定、日本政府が防衛力強化も…懸念される財政当局の〝横やり〟
【山下裕貴 目覚めよ日本】 岸田文雄首相とジョー・バイデン米大統領は10日、米ワシントン・ホワイトハウスでの首脳会談で、覇権主義的な動きを強める中国に対し、日米が緊密に連携する方針で一致した。「日米同盟の抑止力、対処力の強化」が急務とし、「自衛隊と在日米軍の連携強化」に向けた指揮・統制枠組みの見直しでも合意した。2023年版の防衛白書が、「これまでにない最大の戦略的挑戦」と指摘した中国の軍事力増強の実態はどうなっているのか。元陸上自衛隊中部方面総監で、千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏が、最新情報に迫った。 【地図で見る】陸自が新編した部隊、中国念頭に南西地域防衛を強化した ◇ 現在、人民解放軍は「戦って勝てる軍隊を創造する」という習近平総書記(国家主席)の指令により、毎年巨額な軍事予算を投入して近代化を進めている。彼らは、1991年の湾岸戦争における米軍の指揮情報システムの活用、精密誘導兵器の使用などを見て、「自分たちが大きく遅れている」と判断した。近代的な指揮システムなど、情報化戦争を念頭においた作戦構想、編成・装備の研究に着手した。 習氏は2022年10月の共産党大会政治報告の中で、「早期に世界一流の軍隊を築き上げる」とし、27年の人民解放軍創設100周年までに「強大な戦略抑止力システムを構築する」と明言した。 米インド太平洋軍の資料によれば、25年には西太平洋地域において同軍の戦力を人民解放軍が大きく凌駕(りょうが)するとしている。作戦戦闘ドクトリンについても侮りがたく、米陸軍の公刊資料「中国の戦術」の冒頭には、「人民解放軍は、2000年以上にわたる中国の軍事的伝統を受け継いでいる。中国は世界で最も有名な軍事戦略および哲学の書物を多く所有しており、中でも『孫子の兵法』は人民解放軍全体に大きな影響を与えている」との記述がある。米軍がどれほど人民解放軍を研究しているか、この一節を見ただけでも理解できる。 一方、人民解放軍と対峙(たいじ)する可能性のある自衛隊の戦力はどうか。 中国の24年国防費は約34兆円であり、日本の防衛予算の4・4倍、国家予算の約30%に相当する。人民解放軍の陸軍兵力は約97万人であり陸上自衛隊の約6倍、戦車保有数は約5800両と約17倍である。海軍は3個艦隊総隻数425隻であり海上自衛隊141隻程度の3倍である。空軍の戦闘機は1629機で航空自衛隊290機の約6倍である。その差は開くばかりだった。