春ドラマ名作ベスト3。日曜劇場も壮絶だったけど、“号泣まちがいなし”のNo.1は
1位:アンメット ある脳外科医の日記
この春クールで最も心を揺さぶられた作品は、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)でした。漫画『アンメット ーある脳外科医の日記ー』(原作:子鹿ゆずる、漫画:大槻閑人/講談社刊)を原作に、事故によって記憶障害の重い後遺症を持つ脳外科医の主人公・川内ミヤビ(杉咲花)が、仲間たちと患者を全力で救い、自分自身も再生していく物語です。
“役を生きている”俳優たちと、丁寧な人間描写
観た人たちが口を揃えて“傑作”という本作の魅力は、繊細な人間描写にあると思います。 ミヤビの記憶障害は、過去2年間の記憶が抜け落ちた上で、今日のことを明日にはすべて忘れてしまうというもの。誰に会って何を話し、何に喜び、悲しんだのかを毎日リセットされるのは、想像を絶する状態です。しかし物語のなかで、私たちは気づかされます。記憶がなかったとしても、積み重ねてきた努力や関係性は失われないし、強い感情は心が覚えて繋がっていくということに。それを教えてくれるのが、登場人物たちなのです。 ミヤビと、同僚の脳外科医であり婚約者を名乗る三瓶(若葉竜也)の両名はもちろんですが、ミヤビの主治医・大迫教授(井浦新)、同僚の救命医・星前(千葉雄大)、看護師長・津幡(吉瀬美智子)、かつてミヤビに好意をもっていた脳外科医・綾野(岡山天音)といった、彼女を取り巻くキャラクターの人柄や関係性も丁寧に描かれました。一人ひとりの解像度が高く、役者たちが皆、まさに“役を生きている”と感じさせるのです。ミヤビだけでなく、それぞれに抱えているものがある。その不完全さを、愛おしく映し出しています。
不完全さを補い合い、支え合っていく姿に涙
そんな“不完全”な登場人物たちが、この物語では支え合って患者たちを救っていきました。第1話で三瓶が、医療行為を避けるミヤビにかけた言葉「川内先生の技術や知識で今できることを提案しています。足りない部分は周りがフォローすればいい。当然のことです。川内先生、あなたは障害のある人は人生を諦めて、ただ生きていればいいと思っているんですか?」は全話に通じています。そこには、優しさがあふれている。 医療ドラマは、医師の技術や難病が治るか治らないかに焦点が当たりがちです。しかし本作では、とにかく人と人が支え合うことの尊さが、登場人物たちの日常を通じて描かれています。「完璧である必要はない。きっと誰かが明かりを灯してくれる。助け合って生きていこう」。そんな風に、視聴者を勇気づけてくれる作品です。 第9話でミヤビの記憶障害の原因が、決して人がメスを入れてはいけない領域・ノーマンズランドにあり、無理に手術をすれば命に関わる状態であることが判明しました。第10話では、葛藤しながらもミヤビの手術ができるよう練習に没頭する三瓶に、ミヤビは「手術をしない」と告げます。それは三瓶に笑顔でいてほしいから。しかし最後には倒れてしまうミヤビ。もうほぼ毎話泣かずにはいられないのですが、6月24日放送の最終回は号泣必至でしょう。ハンカチを握りしめて、ミヤビがまた美味しそうにごはんを食べる姿が観られるように、祈りたいと思います。 ======== この春はドラマの放送枠も増えて、深夜帯も含めると数多くの作品が放送されました。皆さんのお気に入りのドラマはありましたか? もう来週には夏ドラマがスタート。どんな名作が生まれるのか、今から楽しみです。 <文/鈴木まこと(tricle.ltd)> 【鈴木まこと】 tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
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