内野手グラブ使用法は「サンチュ派」「トング派」 現役時GG賞のDeNAコーチが内野手捕球方法を解説
内野守備における捕球時のグラブの扱い方は、大まかに2つの傾向に分かれるという。DeNA・田中浩康内野守備兼三塁ベースコーチ(42)は、「サンチュ」「トング」と焼き肉を例に分類。独自の言い回しで、選手たちの指導法に役立てている。 【写真】主将は「サンチュ派」 独特な言い回しで守備陣のレベルアップを図る ◇ ◇ 「トングじゃないぞ。サンチュやぞ、サンチュ」。今キャンプでの特守。遊撃の定位置を求める若手内野手を、ノックバットを握った田中コーチが独特なワードで鼓舞していた。 グラブ捕球を、焼き肉の人気メニュー・サムギョプサルなどを包む野菜「サンチュ」に例えた田中流の指導法。「つまむな、とか包み込め、って言ってる間に、『サンチュ』っていうワードが出てきました。サンチュで肉を包むような感じ。そう伝えた方がイメージが浮かびやすい」。ユニークでキャッチーな命名だが、同コーチは「グラブの使い方には大きく分けて2種類あります」と説明する。それが「サンチュ」と「トング」だ。 まず「サンチュ」タイプは、スタンダードな捕球方法。チームでも西浦以外がこの「サンチュ」タイプで、現役時代はヤクルト、DeNAに所属し、二塁手でゴールデングラブ賞を獲得した同コーチ自身も「サンチュ」派。「包み込むように捕るので、より素手感覚に近い捕球が可能になる」のが最大のメリットだという。 対する「トング」は、グラブの小指部分に小指と薬指の2本を入れる「小指2本使い」=通称「コユニ」と呼ばれている捕球方式。「サンチュ」に対し、田中コーチはあえてこちらを肉をつかむ「トング」になぞらえて分類する。 「ポケットの部分を広く使えるので、捕球がしやすいのがメリット。一般的に外野手のようなグラブの使い方に似ています」。ただし「素手の感覚が少しなくなるので、球の持ち替えが少し遅くなる」というデメリットもあり、素早い握り替えと送球という点では難易度が高くなる。 現在、球界ではその使い手の代表格として西武・源田壮亮内野手が知られているが、WBC日本代表にも選出された源田の影響で、昨今は中学生や高校生らアマチュア世代に「トング」タイプが急増中だという。 田中コーチはこの2種類を踏まえ、チームの内野手全員のグラブの使い方をチェック。どちらに分類されるかを把握し、それぞれに適したコーチングに取り組んでいる。その徹底した指導法の背景には、近年の野球の進化がある。打球速度は年々上がっており「ヒットの打球も速度150キロを超えた打球が飛びやすいところも守ってアウトにしていかないといけない。より高い技術が求められる」と力説。「0コンマ何秒の判断につながる」という点でも、グラブ使いの特徴の把握は有益といえる。 野球の進歩に合わせ選手たちがレベルアップに励むように、「教える方も一緒にアップデートしていかないといけない」と田中コーチ。「サンチュ」と「トング」も、そのためのアプローチのひとつ。選手ひとりひとりの特性に合わせ、最前線の技術を注入していく。(デイリースポーツDeNA担当・福岡香奈)