選挙妨害か表現の自由か…元検事は『単なる妨害と犯罪に達するかは別』との見方『国家権力はできるだけ政治・選挙に介入しないのが原則』だが『摘発をやろうと思えばできる』
すごい音量で、拡声器でワーッて、30分間やったらおそらく…
(元大阪地検検事 亀井正貴弁護士)それは、犯罪に達しないけれどもやはり邪魔になったからやめたということであって、犯罪に達するかどうかは別です。例えばすごい音量で、拡声器でマイク近くでワーッてやって、これを30分間やったらおそらく威力業務妨害容疑で検挙して、選挙の自由妨害というのは後でやるんですね。 というのは、自由妨害罪は選挙に関してやるということですから、やっている人たちの主観的な要件の立証、背景や動機も必要になる。その意味では、まずわかりやすい容疑でやって、後でちゃんとやっていくケースもあります。 一般的に自由妨害はポスター破りが一番多いんです。なぜかというと器物損壊が明らかだから。こういうケースもそうですけれど、一応表現の自由、特に候補者の場合には、自己の政治的見解を述べている可能性もあるから、それ以上に難しいんです。
7月の都知事選挙は「今回の比じゃないくらいやりたい」と主張
――政治団体の代表は「一方的に妨害しているだけではなく、候補者が聞かれたくないことを俺らが代わりに聞いている」「選挙妨害では絶対ないと思っている、これこそが言論の自由」と主張しています。そして7月の都知事選挙でも「今回の比じゃないくらいやりたい」と主張しています。 (元大阪地検検事 亀井正貴弁護士)こういうふうに、妨害の認識が一応認定できるような言動をしてさらに次もやるとなれば、当然捜査機関は目をつけて証拠収集を始めるわけです。 自由妨害罪って昔は証拠保全が難しかった。行ってももう誰もいなくなって、聴衆もいないから証拠が得られない。だけど今は動画とかありますから、証拠収集していって、次の選挙とかではおそらく注目されると思います。
「本気で摘発をやろうと思えばできる」
(元大阪地検検事 亀井正貴弁護士)ポスターを破るとか、直接相手の陣営のところに攻撃かけるという事例に比べて確かに演説妨害の判例ってそんなに多くないんです。なぜかというとやっぱり検挙を躊躇するから。だけど他方で言うと、「演説を妨害してはいけない、不正な方法でやってはいけない」と書いてるわけだから、やろうと思えばやれるんです。だから前の判例でこれだけの境界線があったから次もOK、とはならないです。捜査機関が本気で摘発をやろうと思えばできるんです。 ――この政治団体は引き続きこういった行為を続けると明言していますし、こういったことをする他の人たちが出てくる可能性もあります。いずれにしても議論を進めていかなければならないテーマだと思います。(2024年4月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より) ◎亀井正貴:元大阪地検検事 弁護士として民事・刑事裁判を多数担当