新型コロナ「入国制限」「隔離」各国政府と日本の対応比較
下船後の乗客や厚労省職員らの感染事例が相次ぐ
日本政府としては、クルーズ船上で14日間の健康観察期間を終え、その後の感染はないと考えたのでしょうが、実際には下船後に感染が判明するケースが出てきています。 また、船内で業務していた厚生労働省や内閣官房などの職員(検疫官含む)の多くは、ウイルスの検査を受けずに職場に復帰していました。そのうち6人の感染が明らかになっています。 船内での集団感染の大半は、今月5日からの健康観察期間に入る前に起きたものだとする日本政府の説明は、破たんしていると思われます。本稿では詳しく触れませんが、そもそも政府による情報提供のあり方が適切であったかも疑問です。さらにダイヤモンド・プリンセス号をめぐっては、そもそも入港を認める必要があったのかという見方も浮上しています。
ミクロネシアや韓国、イスラエルなどが日本への渡航抑制
こうした日本の対応を見る各国の目は厳しさを増しています。ミクロネシア、韓国、タイ、トンガ、サモア、キリバス、ソロモン諸島、ブータンおよびイスラエルの9か国は日本への渡航抑制を呼びかけています。 米国と台湾は日本への渡航につき注意喚起を行っています。米国は日本への渡航の警戒レベルを4段階で下から2番目の「警戒を強化」に引き上げたと発表しました。台湾も同様の措置を取りました。 日本に対する批判の中には、新型コロナウイルスについての理解が足りないために生じた感情的なものもありますが、日本側にも反省すべき点があるのは否定できません。 政府は安倍首相を本部長とする新型コロナウイルス感染症対策本部を立ち上げ、1月30日から計12回の会合を重ねていますが、閣僚の欠席が相次ぐなど感染拡大の防止ついて有効に機能しているのか疑問です。2月16日からはようやく専門家による対策会議での議論を始めています。 日本での感染者は今後も増え続けることが予想されます。国際社会からの信頼を失わないためにも、 日本政府はこの際、オープンな態度で、早急に徹底した検討を行う必要があると考えます。
---------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹