【オーストラリア】MUJI、豪で食品事業を開始
無印良品(MUJI)がこのほど、オーストラリアで食品の販売を開始した。日本で屈指のブランド力を誇り、オーストラリアでも生活雑貨を中心に若い世代からの支持を得た同社は、今後は食品事業も展開することでリピート客を増やし、さらなる成長を目指す構え。冷凍食品やレトルトカレーなど日本や世界で人気の高い食品をオーストラリアでも展開していくほか、オーストラリアでの商品開発も積極的に推進する計画だ。【オセアニア農業食品専門誌ウェルス編集部】 オーストラリアではスナックや飲料、レトルト食品などの新商品を2024年を通じて順次投入する。MUJIリテール(オーストラリア)の斉藤拓也マネージングディレクター(MD)はウェルス編集部に対し「食品部門を今後の成長の柱として品揃えを拡大していく」と述べた。 当初は日本や海外販社で取扱実績のある既存商品を輸入し販売する方針だ。一方でMUJIは「地域への土着化」という共通テーマを持つことから、ローカルでの商品の開発や販売も積極的に進めていくという。斉藤MDは「オーストラリア国内の地域生産者と消費者をつなぐ役割を果たしたい」とした。 同氏によると、同社の食品の最大の強みは「シンプルで生活に密着した商品ラインナップ」という。商品の製造において食材の選択から包装に至る工程にこだわり、一方で顧客の意見に基づき改良を継続する。09年に発売したバターチキンカレーは、今月19日に6回目の刷新を行うなど常に改良することで日本や世界で高い人気を得た。また、菓子類では焼きむらや凹凸など味に関係ない選別をなくすことで価格を抑えている。こうした商品はオーストラリアにも投入される予定で、売上拡大への貢献が期待されている。 MUJIはオーストラリアでの食品部門の売上目標を、今年は全体に対する売上構成比で3%、来年には5%を目指している。 ■コスト高でもスナック消費は増加 斉藤MDは食品への展開の目的を、新規顧客に対する訴求力を拡大するだけでなく、既存顧客に対しても、日常的な利用を促進するためとした。MUJIがオーストラリアで事業を開始して今年で11年目。斉藤MDは「顧客ニーズの分析や市場調査を元に、今のタイミングで食品を展開することが最適だと判断した」という。 実際に豪政府統計局(ABS)が今月12日に発表した食品消費統計によると、22/23年度(22年7月―23年6月)に全国で販売された食品(ノンアルコール飲料含む)は1,480万トンで、前年度から1.9%減少した。ABSは生活コストの高騰が消費者を圧迫しているとしたが、一方で中期的にはスナックや調理済み食品の消費が増加したと指摘している。チョコレートやポテトチップの消費は過去5年間で順に10%増、16%増と大幅に増え、ピザやラザニアなども9%増加している状況だ。 ■半年以内に2店舗開店 同社の親会社、良品計画は今月8日、新型コロナウイルス禍で不振が続いた欧州事業を再編した。一方でオーストラリア事業は好調とされ、斉藤MDによると現在の客数はコロナ前水準を上回り「販売動向は非常に良い」という。同社の24年3月度売上高情報によると、東南アジア・オセアニア事業の売上高は前年比121%、客数は120%、客単価は101%となっている。 MUJIは現在、オーストラリア国内に4店舗を展開する。好調な業況を背景に、半年以内にメルボルンに2店舗を新規開店する計画だ。またその後もコンスタントに出店し「オーストラリアの消費者の日常に溶け込んだ店舗環境を整える」としている。