70代高齢者より10代のほうが食べ物を噛み切れていないという衝撃の事実。ろうそくの火を吹き消せない子どもも…口の老化は高齢者の問題だけじゃない
ろうそくの火を消せない子どもたち
オーラルフレイルではないですが、子どもたちの口まわりの筋肉の発達不足もいま、問題になっています。 それが謙虚にあらわれているのが、口呼吸の子どもが多いことです。 2021年に発表された、新潟大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野の齊藤一誠准教授らの研究によると、日本人の子どもたちの30.7%が日常的なお口ぽかん状態、つまり口呼吸だったという結果が出ています。 自分では閉じているつもりでも、じつは口呼吸をしている「隠れ口呼吸」の人などを含めると、8割くらいが該当するという人もいます。 口呼吸になる大きな原因のひとつが、前述した「噛む力」の低下です。 口呼吸になると、病原菌やほこりなどが入りやすくなるほか、口が乾くことで、口臭などさまざまな影響が出ます。 また、「口呼吸によって睡眠障害、仕事や学習における持久力や活動量の低下などの 症状や注意欠損・多動障害などのさまざまな精神疾患を引き起こすことがある」ともいわれています。
子どもの口の機能が衰えていないかチェックする
このことから、子どもを育てている人はもちろんのこと、大人であっても、仕事や作業の効率が下がることがあり、口呼吸はよくありません。 理由はさまざまですが、酸素を十分に取り込めなくなることなどが考えられます。口呼吸は大人にも子どもにも見られます。 3歳くらいの子どもだと特にわかりやすく、上唇がまるで富士山のようなかたちにめくれ上がっているような状態です。 かつて「あひる口」がかわいいと流行したことがありましたが、まさにあのようなかたちですね。 上唇が上がっていると、出っ歯になりやすくなります。 上あごだけが前に出て、下あごが引っ込んで成長してしまうからです。 また、前歯が目立ってしまうので、歯並びが乱れて顔立ちもアンバランスになる傾向があります。 「噛む力」や「舌の力」など口のなかの機能が衰えてしまうことで、口がぽかんと開いた子どもが増えていると述べました。 そこで、子どもの口の機能が衰えていないか次のような簡単なチェックをしてみてください。 ◆口を自分でクチュクチュとゆすげるか ◆自分でうがいができるか ◆誕生日ケーキのろうそくの火をふき消せるか ◆風船をふくらませるか 3~4歳で、これらの項目がうまくできなければ、口の機能が衰えている可能性があります。 むかしの世代の人には信じられないかもしれませんが、実際にこのようなことができない子どもたちが、いまとても増えています。 小学校で、口や歯の大切さを教える出前授業をしたとき、クラスの半数以上の子どもが風船をふくらませなくて驚いたことがありました。 それはもともと力がないのではなく、日常的に口の力をあまり使ってこなかったために、どうやって口をゆすげばいいのか、どのように火をふき消せばいいのか、力の入れ方がわからないということもあるようです。 また、ブクブクうがいは3歳で約50%、4歳で約75%の子どもができるようになるといわれていますので、ひとつの目安になるでしょう。 いずれにしても、子どもから高齢者まで、すべての人たちが口の状態に対してもっと真剣に興味を持たなくてはならない時代がきているように感じています。 照山裕子 監修/來村昌紀 ---------- 照山裕子(てるやま ゆうこ) 歯学博士・東京医科歯科大学非常勤講師(顎義歯外来) 日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。世界でも専門医が少ない『顎顔面補綴』を専攻し、口腔がんの患者と歩んだ臨床体験から予防医学の重要性を提唱する。 「日本人の口腔ケアへの意識を変えるにはどうしたらいいのか?」という課題の答えのひとつとして考案した内容を『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)として書籍化。13万部のベストセラーとなった。現在は大学病院及び全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも多数出演。『日経xwoman』のオフィシャルアンバサダーも務める。『新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)など、著作多数。 ---------- ---------- 來村昌紀(らいむら まさき) らいむらクリニック院長・千葉大学臨床教授・医薬学博士・日本脳神経外科学会脳神経外科専門医 和歌山県出身、和歌山県立医科大学、千葉大学大学院卒業。和歌山県立医科大学附属病院などで、経験を積み、2014年にらいむらクリニック開設。著書に『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(あかし出版)などがある。 ----------