「松本人志VS文春」訴えの取り下げをした“決定的な理由”。「強制性の証拠なし」の違和感
「強制性の有無を直接に示す物的証拠はない」は当然のこと
では、松本氏側のコメントに書かれていた「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました」とは何を示すのだろうか。 前述の法律関係者によると、同様の裁判では一般的に「強制性の有無を直接に示す物的証拠はない」というのは当たり前だといい、松本氏側の理由付けに首をかしげた。 「今回のような性加害と疑われる事件は密室で行われるので、強制力の有無を直接に示す証拠は、ほとんどのケースで出てきません。そこで、A子さんやB子さん、文春の記者などが裁判に出廷して証言をしたり、陳述書を提出したりして、その『信用性』を争うのが一般的なんです」 筆者がこれまで傍聴してきた刑事裁判でも同様だ。性加害で起訴された事件の公判では、「強制力の有無を直接に示す証拠」は出てくることがなく、被害者の供述調書や公判での証言を経て、裁判官が「被害者の証言には信用性がある」と認定するのが一般的。
文藝春秋が敗訴した裁判例
一方で、過去には文藝春秋が敗訴した裁判例も多数存在する。今年9月には、自民党の松下新平参院議員が、「外交秘書」とした中国人女性と親密な関係にあると報じた文春記事で名誉を毀損されたとして、文藝春秋に3,300万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決で、275万円の支払いを命じた。東京地裁(杜下弘記裁判長)は、判決で「客観的な裏付けを欠いたまま記事を掲載した」と判断している。 どちらに軍配があがるのか、「決してこの裁判記録だけでは判断しきれない」と法律関係者は言い残した。
芸能界復帰への道は?
“勝ち目なし”と悟ったのか、その後の説明がない以上は「訴えの取下げ」の真相は分からないまま。大御所芸能人の松本氏が、約5億5,000万円もの高額な訴訟を提起して、曖昧な終結。さらには、十分な説明がないまま沈黙を貫く松本氏の姿に、世間が騒ぎ立てるのも当然だろう。 「強制性の有無を直接に示す物的証拠はない」という松本氏側の理由付けに“ナゾ”が深まる。いずれにしても、「会見予定なし」と松本氏本人が沈黙を貫く限り、芸能界復帰への前進はないだろう。 文/学生傍聴人 【学生傍聴人】 2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。
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