「自分はもう2枚目なんやろうなって…」阪神2位・今朝丸裕喜に“エースナンバーを奪われた男”「ライバルで親友」間木歩の決意「4年後のドラフトは…」
本人も驚いた「U18日本代表への選出」
9月に開催されたBFA U18アジア選手権大会。日本代表メンバーには今朝丸だけでなく間木も選出された。 だが、実際は代表に選ばれるとは全く想像していなかったという。 「(選出は)夏の甲子園の内容でほぼ決まると思っていたので(※報徳学園は1回戦で島根・大社に敗退)。自分は夏に投げたのは4球だけでしたし、選ばれるとは思わなかったです」 選出されたことを聞いた時は、驚きの方が大きかった。一方で、国際大会はメンバーが限られている分、ポジションの兼任も必要とされる。集合までの間は外野の練習にも時間を割いた。 「外野は野球をやってきて初めてだったので最初はどうなるかと思いました。でも、楽しかったですよ。ピッチャーも内野も、常に動かないといけないじゃないですか。結構しんどいんですけど、外野は打球が飛んできそうなときに集中すればいいので」 間木は中学時代は遊撃手だった。今はがっちりと、というよりどちらかと言えば少しふっくらした体格だが、中学の時は「体重は50キロ台でした」という。 だが、中学2年生の時に腰の分離症を発症し、半年間野球ができなかった。入院し、長期間身体が動かせなかったことで体重が20キロ以上も増え、従来のショートの動きができなくなり、投手に転向した経緯がある。 「もともと体が細かったので、体重が増えたことでちょうどいい体型になりました」 フィールディングに自信があるのも遊撃手の経験があるからだった。
日本代表でもキャプテンに…「なぜ自分が?」
そうした準備を重ね、集合した日本代表でも、間木はキャプテンに選出された。 「自チームで主将だった箱山遥人(健大高崎)や宇野真仁朗(早稲田実)でもなく、なぜ自分が?」 当初は戸惑いもあったという。 「報徳で一度キャプテンを降りている身なので、『ちゃんとできるのかな』とか、『僕についてきてくれるのかな』とか不安はありました。選手の数も報徳とは違いましたし、報徳の時と同じやり方だったらうまくいかないこともあると思うので、その場その場に合わせて状況を見て考えながらやっていこうと思いました」 個性が確立された選手が集う連合チームの主将は何かとうまくいかないこともある。それでも、言葉通り間木は多くの選手と触れ合いながらチームの先頭に立った。海外での慣れない生活リズムに、抵抗のあった食事。時にはチームメイトとはしゃぐ高校生らしい姿を見せたが、準優勝するまでの17日間、キャプテンとして任務を全うした。 そして、その隣にいたのはやはり今朝丸だった。 大会の序盤で、決起集会としてチームで焼肉屋に夕食に出掛けたことがあった。 多くのメンバーが賑やかに網を囲む中で、間木と今朝丸は当たり前のように隣同士に座り、焼き肉を堪能した。互いに初めてだった国際大会で、普段から見慣れた顔が隣にいるだけで安心感があったのだろう。 この2年半で、投手としての“真剣勝負”は今朝丸に分があったのかもしれない。だが、今朝丸との出会いは、間木の考え方を大きく変えた。 「今朝丸と一緒にやってきて、結果にどん欲になれたというか、どれだけ結果を残せても『まだまだ』と満足せずに上を見られるようになりました。今朝丸がこれからプロで頑張ってくれたら、自分も尚更頑張れます」 来年からは大学野球が間木の新たなフィールドとなる。個人の目標は両手で数え切れないほどあるが、目指すのはやはり“真のエース”だ。 「高校では今朝丸と二枚看板と見られてきて、自分も(今朝丸に)頼ってきたところがあるので、大学では独り立ちしたいです。エースとして、結果を残せるようになりたい。あとは……やっぱり全国優勝したいですね。高校ではできなかったので(※2年連続でセンバツ準優勝)。中学の時も全国で準優勝だったんですよ。U18も準優勝でしたし。大学では全国優勝、それと大学ジャパンで投げたいです」 真のエース、そして日本一。高く設定した目標は、間木をさらに上のレベルの投手へと導くだろう。そして、いつかは背中を追いかけたライバルと同じ舞台へ――。 その先の自分を想像すると、夢は膨らむ。 「でも……4年間って長いっすよね。これからちゃんとやっていかないとダメですね」
「4年後、自分は…」
緩い口調ながら間木の覚悟の言葉が秋の夕暮れの中に響く。 気付けば、今朝丸を祝う歓喜の輪は解けていた。 仲間たちと一通り喜びを分かち合った後、ひっそりと間木はグラウンドを立ち去ろうとしていた。その去り際、滑らかな口調でこう言い切った。 「4年後、自分は競合してプロに行くくらいのピッチャーになります」
(「甲子園の風」沢井史 = 文)
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