米国債ベーシストレードは健在-ボラティリティーが急上昇しない限り
(ブルームバーグ): ヘッジファンドが米国債とその先物の間のわずかな価格差から利益を得るために使う戦略であるベーシストレードが復活している。流動性の逼迫(ひっぱく)で市場が混乱しない限り、その人気は高まりそうだ。
この手法では通常、価格が収束することを期待して割安と思われる証券を購入し、もう一方の資産を空売りする。米国債を担保にしたローンである翌日物レポ取引のために市場で証券を借り入れることによる大きなレバレッジに依存している。
BNYメロンの顧客向けリポートによると、米国債発行残高のほぼ0.8%がローン、つまりショートされている。同行によればこれは、レバレッジを効かせた資金が2018年以来最も速いペースで債券を借りてショートしていることを示唆している。
また、商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、レバレッジファンドの2年債と5年債先物のショートポジションは拡大している。一方、BNYメロン独自のiフローデータによると、23年半ば以降、米国債市場へのフローは一貫してプラスだと、同行の外国為替・マクロストラテジスト、ジョン・ベリス氏はリポートで指摘している。
連邦準備制度理事会(FRB)が金融システムから流動性を徐々に引き揚げているため、資金調達市場は今のところ安定しているが、懸念されるのはベーシストレードへの継続的な人気により、レポ市場も現物市場も流動性、つまり買い手を見つける能力への圧力に対して脆弱(ぜいじゃく)になっていることだ。ボラティリティーが高まれば取引コストが上昇し、債券を買って先物をショートする現在の戦略で得られる利益がなくなる可能性がある。
そうなると、ヘッジファンドはローンを返済するためにポジションを急速に解消しなければならなくなる。その結果の価格変動は流動性のさらなる低下を招き、米国債市場の混乱を促すことになる。
「レポ市場がストレスを受け始めた場合、醜い巻き戻しや性急で大幅なショートカバーが債券市場に脆弱性をもたらす可能性がある」とベリス氏は分析した。