センバツ高校野球 届け、全力の鼓舞 作新応援部女子部長・青木陽奈さん(2年) /栃木
◇明るく強く、ニコやかに 第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する作新学院の応援を引っ張るのは、今年創部65周年を迎える応援部だ。女子として同部史上2人目の部長を務める青木陽奈(ひな)さん(2年)は「選手はもちろん、作新を応援するたくさんの人に私たちの思いを全力で届けたい」と意気込んでいる。 「サクシーン、オッス」――。2月半ば、同校体育館の横で濃紺の学ランをまとった7人の応援部員が旗を振りながら声をからしていた。野球部のセンバツ出場が決まってからは一層、練習に熱がこもる。「ここは、右手を素早く挙げるとかっこよく見えるよ」。時折、青木さんが練習を止めて細かく動きを指導する。 応援部は1958年夏、野球部が甲子園初出場を果たしたのを機に発足した。甲子園などの大きな大会では、チアリーディング部や吹奏楽部など他部を含めた「応援団」が組織され、応援部長が団長を兼ねてアルプススタンドから声援を送る。 2014年まで応援部員は男子のみだったが、女子の希望者がいたことや時代の流れに沿って15年から女子も入部できるようになった。翌16年の夏の甲子園で野球部が全国制覇を果たすと女子部員はさらに増加。現在は全7人のうち5人が女子だ。平日の週5日練習をし、野球部の他、サッカー部、ラグビー部、バレーボール部などが出場する大会で応援を行う。 青木さんは毎日、那須塩原市の自宅から片道約2時間かけて同校に通っている。応援部に入ったきっかけは、中学卒業直後の春休みにあった作新学院の入学者説明会。部活動紹介の一環で応援部が披露した演技を見て「一目ぼれした」と言う。「女子の先輩がいて大きな声ですごい迫力だった。学ラン姿にも憧れた」と振り返る。 青木さんが入学した21年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、社会活動は制限された。「声出しをしてはいけない時期や、マスクを付けての活動が続くなどとても苦しかった」。一方で、20年夏は甲子園が中止になり、昨夏は県大会で敗れたことに触れ、「野球部も苦労があったはず」とおもんぱかる。青木さんは、「だからこそ、ずっと甲子園に行ってほしいと願って感染対策をしながら頑張ってきた」と力を込める。 応援部顧問の石崎朋之教諭は「センバツでは他部を含めた大人数をまとめるプレッシャーがあるはず。でも彼女は決して顔に出さない。いつもニコニコと明るく元気を放っている」と頼もしく感じている。 青木さんにとって甲子園は1年生だった21年夏以来だ。「アルプススタンドに入った瞬間、鳥肌が立った。応援部にとっても大舞台で、野球部には『また連れて行ってくれてありがとう』という気持ち。私たちの応援から攻守でいい流れを作れるよう、選手の心に響かせたい」【井上知大】