磨きがかかった怪談朗読劇 今回はトリオで魅了!
【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】怪談朗読劇をライフワークとしている東映京都俳優部所属の女優まつむら眞弓が11月16日に東京都中野区の宗清寺で東京公演を開催、足を運んだ。 港区の泉岳寺や伝統文化交流館などで行ってきた朗読プロジェクトの第7弾で、同寺での公演は昨年9月30日に続いて2度目。今回は怪談作家で自ら語り部も務める川奈まり子氏、女優の三輪和音とジョイントし、「妖女“参”物語」と題して上演した。 先陣を切ったのが三輪。史実に基づいた「吉良上野介の立場」を語った。「東中野には吉良さんの墓がある」と紹介した通り、中野区上高田の萬昌院功運寺に眠る上野介を題材に、公演場所の“地元ネタ”で観客の心をつかんだ。 「怨(うら)みとは、思い残しがあるから出てくる。忠臣蔵の背景には経済がある。それは今にも通じるものです。まつむらさんの十八番“不忠の義士”を斜め向かいに置いたお話です」と解説付きで魅了した。ちなみに、「怪談たたり三味線 不忠の義士」は赤穂浪士の橋本平左衛門が遊女と心中した実話を元に東映のスタッフが創作した一編だ。 次に登場した川奈氏は実話怪談「板橋の女」をかけた。「例えば、幽霊を見たという人がいる。錯覚かもしれないけれど、その話に客観的な視点を持ち込まず、その人の主観に寄り添ってあげると、そこに怪談が生まれるのです」と、元風俗で働いていた女性から実際に聞いたという話を披露した。 そして、トリを飾ってまつむらが東京初上演となる「怨みの磯良」を1時間ほどを費やして熱演した。上田秋成の「雨月物語」の「吉備津の釜」がベース。「岡山から京都に舞台を移し、800年も生きながらえている不老長寿の比丘尼が京言葉で世の哀れを語り伝える物語。女性を裏切ると怖いという話です」と、7人の登場人物を巧みに演じ分けてみせた。 来年は朗読劇を始めて15年。「これまでもたくさんの応援を頂き、感謝しております。来年も新しい企画で頑張っていきたい」と誓いを新たにした。