【訂正・皐月賞回顧】マイル質の高速決着に適応したジャスティンミラノ 適性の差が出たシンエンペラーは次に注目
配合で変わるキズナ産駒
今回、共同通信杯組2頭の位置関係は逆だった。前に出たのはジャンタルマンタル。前走は次に控える2000mを意識し、折り合い重視でリズムをつくることに専念した印象があった。その課題をある程度クリアできたからこそ、今回は前走の結果も踏まえ前へつけた。作戦は間違えなく一旦は抜け出した。坂で止まった印象なので、急坂の2000mは若干長いということだろう。対してジャスティンミラノは枠も外目だったこともあり、今度はひと溜めできる位置をとった。目の前にはジャンタルマンタルもいる、いわゆる絶好位といっていい。最高の運びと速い流れが見事に結果にむすびついた。 ジャスティンミラノの父はキズナ。牡馬だと少しスピード不足の産駒が多くパワー型とみられていたが、ジャスティンミラノはキズナの父ディープインパクトに似たスラっとした体型をしている。500キロを超えながら、腹目がすっきりしており軽さを感じる。母の父エクシードアンドエクセルはオーストラリアのチャンピオンスプリンター。香港の短距離王ミスタースタニングや8ハロンのGⅠ3勝のエクセレブレーションなどスピードタイプを多く輩出した。そんなスプリント志向の血がキズナと結びつくことで、キズナの奥にあるディープインパクトを引っ張り出す。ノーザンファームが配合でキズナの良さを引き出した。それがジャスティンミラノだ。これからはキズナ産駒の傾向も変わってくるのではないか。
高速決着の皐月賞とダービー
2着コスモキュランダは2017年皐月賞馬アルアインの産駒。高速決着の皐月賞で父の血が騒いだ印象だ。ゴール前の脚色は先に動いたジャスティンミラノを上回っており、ダービーでの可能性も感じた。だが、アルアインはダービー5着。2年後、同じような内回り芝2000mの大阪杯を勝った。ついでに似た皐月賞を勝ったディーマジェスティもダービーは3着。マイルっぽい皐月賞で好走した馬はダービーで違う適性を乗り越えないといけない。 アルアインの年はダービーを皐月賞5着レイデオロが、ディーマジェスティのときも皐月賞2着マカヒキが逆転に成功した。スピードの持続力勝負で好走するも適性の差で敗れた馬となると、5着シンエンペラーではないか。凱旋門賞馬ソットサスの全兄弟で、まだまだ気性の若さも抱えており高速決着は明らかに不向き。それでも5着確保は能力の高さを示す。 レガレイラは最後、伸びるも6着に敗れた。末脚は繰り出せたが、いかんせんペースが速すぎた。マイルではなく2000mに適性を感じたからこその参戦だけに、マイルに近い中距離戦では厳しい。外を通った分もあるが、そもそも前半のペースがレガレイラの能力全開を阻んだ印象だ。 それだけに、スローに近い2000mの直後に高速レースを経験して好走したコスモキュランダとシンエンペラーに逆転を託したくなった。皐月賞の高速決着は、実はダービーの着順に直結しない。歴史が示す事実でもある。時計のインパクトが大きいジャスティンミラノの能力を称えつつも勝負づけはまだまだ済んでいない。いずれにせよ、ダービーは皐月賞の向こうにある。当日までしっかりおさらいしよう。 【訂正】画像の3着がアーバンシックとなっていました。正しくは3着ジャンタルマンタルです。訂正してお詫び申し上げます。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳