【バブルの悪夢再来か?】東京都心の中古マンション1億円突破へ、日銀マイナス金利解除のメディアの報じ方を読む
日本銀行が3月19日の金融政策決定会合において、異次元の金融緩和の柱であるマイナス金利政策の解除を決めた。17年ぶりの利上げとなる。日経平均株価は22日に一時4万1000円を超えて史上最高を記録した一方で、円安ドル高は進んだ。 ドイツの宰相であるオットー・ビスマルクの言葉である「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」は、さまざまな局面で引用される。日銀は2000年と06年にも利上げに踏み切ったが、前者はITバブルの崩壊によって、後者はリーマンショックによって再び利下げに追い込まれた。 アベノミクスと呼ばれた財政の出動と大規模な金融政策、そして新たな産業の育成とともに17年もの長期にわたって続けられた異次元の金融緩和について、検証されなければならない。
歴史に学んでいなかったメディアの質問
今回の日銀の金融政策決定会合では、マイナス金利の解除とともに上場投資信託(FTF)と上場不動産投資信託(J-REITE)の買い入れもやめることが決まった。中央銀行がFTFとJ-REITEを買い入れるのは歴史上ない事態だった。 また、10年もの国債の買い入れを図って長期金利を抑え込むという「イールドカーブ・コントロール」も異例だった。中央銀行は短期金利を操作することによって金融市場の安定を図るのが基本だからである。 政策決定会合後の記者会見において、異次元の金融緩和についてその効果に関する質問が相次いだ。しかし、植田和男総裁は「(日銀内の)レビューを待って明らかにしたい」と繰り返すにとどまった。 インターネット中継によって会見を見ていた限りでは、記者団はバブル崩壊もITバブルもリーマンショックも現場で取材した経験者がほとんどいない印象だった。「歴史に学ぶ賢者」の質問がなかったことは過去に学んでいないのである。
異次元の金融緩和をはじめとする金融財政政策をレビューするのは、メディアの役割である。日本がなぜ「失われた30年」に沈んだのか、いまそこから浮上しつつあるのか、今回のマイナス金利の解除は過去のように再び利下げに追い込まれるようなことはないのか。 テレビ東京の看板番組である「ワールド・ビジネス・サテライト」(WBS)は、今回の政策決定会合の19日の番組のトップで、簡潔ながらも過去の歴史も振り返りつつ評価を試みた。ゲストにみずほ証券チーフアナリストの小林俊介氏を迎えて、日経新聞編集委員の滝田洋一氏が分かりやすい解説をした。 小林チーフエコノミストは「(今回の金融政策会合の決定は)大手術だった」とみる。「単金金利をマイナスから是正し、かつイールドカーブ・コントロールをやめた。それにとどまらずに今後も国債を買うことによって金利をあまり上がらない姿勢を明らかにした」と、分析した。この結果として「金利が上がらず、株高を維持した。うまく切り抜けた」と。 滝田編集委員は、金融政策会合の審議委員のなかで2人がマイナス金利の解除に反対した事実は、今後も金融政策について議論を進めるうえで重要だと指摘する。反対したのは、日立製作所の元取締役の中村豊明氏である。 「(中村氏はメーカー出身であることから)大企業の賃上げが進んでも下請けにそれが浸透するには時間がかかるとみたのではないか。その意味では、銀行や証券出身者ではないメーカーや消費者の代表を審議員に加えるべきだ」と、滝田編集委員は提案する。 番組では今回のマイナス金利の解除が家計と企業にどのような影響をあたえるのか、具体的な数字を示している。家計では、住宅ローンの利率の引き上げなどでマイナス2400億円、預金金利の引き上げによってプラス1900億円、トータルでマイナス500億円。企業は預金の金利の引き上げはわずかなので、負債の金利の引き上げに絞るとマイナス6700億円となる、としている。