女子バレー 竹下の後継者、宮下遥の可能性
真鍋監督は5月のチーム始動日に、7名のセッターを招集した。6月のヨーロッパ遠征では、強気のトスを上げる藤田夏未がチームを引っ張った。世界ジュニア選手権で活躍した18歳の細川絢加も候補の一人だ。追加登録された橋本直子も、コンビネーションの面で申し分ない。真鍋監督は現時点で、正セッターについて「どうなっていくかわからない」と濁した。だが、宮下が急先鋒であることに疑いの余地はない. 最大の魅力は、その高さである。身長176cm。腕をまっすぐ伸ばした際の指先までの高さ(指高)は228 cmに達する。身長159cm、指高205 cmの竹下と比べれば、その差は歴然。高い位置でボールをリリースすることによって、トスの軌道は平行に近くなる。必然的にアタッカーに到達するまでの距離が短くなり、相手の守備が整う前に攻撃を繰り出すことができる。高さで劣る日本にとって、速い攻撃は生命線だ。 足りない経験は、実戦で補うしかない。昨季、久光製薬の監督に就任した中田久美は、それまで出場機会のなかった若い長岡望悠と石井優希を起用し続けて、女子として史上初の三冠を達成した。長いシーズンの間には調子を落とすこともある。しかし、中田監督は「これからの日本のバレー界を考えると、絶対に育てなければいけない選手」という理由で使い続けた。「悪いときこそ勝負どころ。そのときに、私が何をしてあげられるか」。女性監督ならではのきめ細やかな配慮に、2人は勝つことで応えた。 真鍋監督に覚悟はあるか。光はある。新鍋理沙へのトスは完璧に近かった。持ち味の柔らかいハンドリングを生かして、伸びのあるトスをアンテナの幅いっぱいまで送り出した。背後へ繰り出すバックトスも、ピンポイントで合わせた。コンビネーションがかみ合い、新鍋は第3セットだけで8本のスパイクを決めている。その新鍋が言った。「どういうトスがほしいかを私から要求することもあるし、遥も『今の(トスは)どうですか?』って聞いてくれたりする。コミュニケーションが取れているので、(コンビが)徐々に合ってきた」。関係性は確実に築かれつつある。 リオデジャネイロ五輪まで3年。チームを構築するまでにかかる時間としてはけっして短くない。宮下を竹下の後継者として育成するための時間は十分に残されている。 (文責・岩本勝暁/スポーツライター)