彼岸花が咲く堤で花嫁行列 “結婚式場ゼロ”の街に挙式を 市の目標は「日本一婚姻が祝福される街」 愛知・半田市
美しい装いの新郎新婦が進んでいくのは、バージンロードではなく彼岸花が咲く川沿いの堤。結婚式場がゼロとなった街で行われた式には、仕掛け人の特別な思いが込められていました。
歴史的な建物や自然などを利用して結婚式をプロデュース
9月28日、愛知県半田市で今では珍しい光景となった花嫁行列が行われていました。彼岸花が咲く矢勝川の堤を、人力車に乗った新郎新婦が進みます。
この花嫁行列を企画した鈴木雅貴さんには、特別な思いがありました。 鈴木さんは、明治40年創業、100年以上続く「カネマタ衣装店」の8代目。店では七五三や成人式など、さまざまな衣装を扱っていますが、1980年代に年200組以上を貸し出していた婚礼衣装は、今は10組以下まで落ち込み、タンスの肥やしになっているといいます。
半田市の若者人口は2009年をピークに減り始め、下げ止まらない状況が続いています。結婚式を挙げる主な世代の人口減少。このあおりを受け、市内に3か所あった結婚式場は2019年を最後にゼロになってしまいました。
カネマタ衣装店 鈴木雅貴さん: 「結婚式場がない街って、仕事上も街のイメージとしても、若い子たちが将来に対する憧れがないみたいに感じる。それが僕は一番残念に感じる」
このままではいけないと、鈴木さんは仲間を募り、ウエディング協会を立ち上げました。式場でなくても結婚式はできる、半田の歴史的な建物や自然などを利用した式の提案をしたい、そう考えたのです。
9月28日にはウエディング協会として神前式をプロデュース。昔ながらの菓子まきには近隣の人たちが駆けつけ、半田で22年間育ったという新婦も感無量の様子でした。 カネマタ衣装店 鈴木雅貴さん: 「結婚式が憧れとなって、挙げたいといってくれる人を増やすこと。そこには僕の役割があるかな」
地元の企業が提供する“日本一手厚い”入籍プレゼントを用意
この花嫁行列が行われた半田市は、行政としても「日本一婚姻が祝福される街」を目指しているといいます。 これまでは本籍地以外の市区町村に婚姻届を出す場合、戸籍謄本の添付が必要でしたが、2024年3月からは原則不要に。全国の好きな自治体に、より簡単に提出できるようになりました。 そこで半田市は、「日本一婚姻が祝福される街」になり、婚姻届けを出しに来てくれる人が増えれば市の魅力が伝わるのではと考え、“日本一手厚い”と自負する入籍プレゼントを用意。婚姻届の受理と同時に渡しているのです。 入籍プレゼントは、“新婚”“ハート”“祝福”をキーワードにした品で、「愛してる」という名前の日本酒や、半田市に本社を構えるミツカンの「味ぽん」、フォトスタジオで写真を1枚撮影できる権利など、全部で7品。いずれも市内の業者が提供しています。 「こうした品を渡すことで、婚姻届を出してくれた人が将来、子どもが生まれたときや家を建てるときなどに移住を考えるきっかけになってくれれば」と、市の担当者は話しています。