決算は好調なのにファーストリテイリングの株価が下がってしまう背景
ユニクロを展開するファーストリテイリングの株価が年初以降、突出して下げている。企業業績面では中国事業の弱さはあるものの、過去最高の営業利益をたたき出すなど好調を維持している。 ここまで売り込まれることに困惑する参加者が多いなか、指摘されているのが季節的な需給要因だ。日経平均算出の定期見直し基準日が迫るなか、同社株のウエート(構成比率)調整を通じて大規模な売りが出ることへの警戒感が、買いの手控えを招いている可能性がある。 同社の決算発表を経た10日の東京市場では、ファーストリテイリング株が一時7.8%安に下落。年初からの下げ幅は終値で約11%に及んだ。市場では「さすがに下げ過ぎではないか」(国内証券のストラテジスト)と困惑する声も聞かれた。 日経平均への寄与がもっとも高いこともあり、この日は1銘柄で指数を328円押し下げた。同株の下落がなければ日経平均は90円弱の小幅な下落にとどまったとみることも可能だ。 野村証券の山岡久紘リサーチアナリストは9日付リポートで「事業ごとに見れば利益面でやや物足りない面もある印象ではある」と指摘。ただ「天候面の影響もあったとみられるほか、中国以外の海外にて順調な売り上げが続いている点にも鑑みれば、先行きを懸念する必要はないだろう」とみている。 それでも株価が大きく売られた背景の一つとして「日経平均のウエート見直しのリスクが意識されているのだろう。少なくとも買いにくさにはつながる」と、フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドはいう。 同社株のウエートは、10日の終値ベースで11.03%に高まっている。1月末に控える日経平均算出の定期見直しでは、基準日に同社株のウエートがキャップ(上限)の10%を上回った場合、日経平均算出時に用いられる株価換算係数にキャップ調整比率0.9が設定されて指数に対するウエートが低下する。 この際、3月末には日経平均をベンチマークとするパッシブ連動資金でリバランスの売りが見込まれる。増沢氏の試算によると、その規模は4000億円弱に上る。ファーストリテイリングは昨年7月末の基準日にウエートがキャップを初めて上回り、ウエート調整の対象となった経緯がある。