株高の先に透ける恐ろしい近未来、「通貨の信用失墜」と「超インフレの到来」は早ければ…
日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新した日本のみならず、世界各国が株高に沸いている。 だが、好景気でも金融緩和でもないのに高値を継続するのは理に適っていない。 これが「通貨の信用失墜」と「超インフレの到来」を先取りする動きであれば、いったい、いつ起こるのか。 (市岡 繁男:相場研究家) 【図表多数】日本以上に株価が上がっている国、ハイパーインフレのすさまじさ…など ■ 非金融部門の債務総額は15年で約3倍に 英国の経済学者、J・M・ケインズは、1930年代に世界経済を混乱に陥らせた大恐慌に対する処方箋として、財政政策(インフラ等への政府投資)と金融政策(利子率の引き下げ)を取り混ぜて需要を刺激するよう求めました。その考えをまとめた『雇用・利子および貨幣の一般理論』は戦後、資本主義国における経済政策のバイブルとなりました。 しかし、そこには副作用があります。 民主主義体制下で経済が低迷すると、為政者は選挙民を意識して、景気を回復させようと財政を拡大し、中央銀行も金利を下げて後押しすることになりやすくなったのです。2008年のリーマンショックや、20年のコロナ禍に際し、各国が打ち出した政策も、国債増発と金利低下を柱とする典型的なケインズ政策でした。 その結果、何が起きたでしょうか? 世界の非金融部門(政府+企業+家計)の債務総額は08年からの15年間で78兆ドルから227兆ドルへと約3倍に拡大し、過剰債務体質になってしまったのです(図1)。 (本記事は多数のグラフを基に解説しています。正しく表示されない場合にはオリジナルサイト「JBpress」のページでお読みください) これは大変な水準です。米国の過去100年の債務比率(非金融債務÷名目GDP)の推移をみると、今は大恐慌期のピークに近い1933年に匹敵する水準となります(図2)。
■ 名目GDPに対する利払い費の割合はリーマン・ショック直前のレベルに もっとも、債務が増加しても金利が低下している間は、それほど心配することはありません。しかし、2020年のコロナ禍で債務の拡大ペースが急加速したこともあって、ついに40数年ぶりに金利が上昇し始めたのです。 債務を返済する原資は、企業の売上高に相当する名目GDPです。そのGDPを増やすためには、労働投入量(働き手×労働時間)の増加、および労働生産性(単位時間あたりの付加価値算出量)の向上が求められます。 残念ながらそれは実現できそうにありません。日米欧中4カ国・地域の生産年齢人口(15-64歳)は、2014年をピークに減少に転じています(図3)。これでは、よほど労働生産性が改善しない限り、GDPが大きく増加することは見込めません。 ここまで債務が極大化した段階で、各国の金利は上昇基調に転じ、米国を除く各国ではGDPや鉱工業生産が低迷しています。その結果、世界の「利払い費÷名目GDP」は2001年のITバブル崩壊前や、2008年のリーマン・ショック直前のレベルにあるのです。いつ新たな金融危機が起きてもおかしくありません(図4)。 問題は、その場合に国債増発と金利低下を柱とするケインズ政策で対処が可能なのか、ということです。 すでに巨額の債務が積み上がっている中での国債増発は、金利上昇に直結します。かえって事態が悪化しかねません。