100か国から外国人兵士「イスラム国」支配の内情は?
昨年末のシリア北部の都市コバニでの敗北、そして、この今月に入ってからのイラク中部の都市ティクリートの喪失など「イスラム国」の後退が続いています。しかし、それでも「イスラム国」の支配領域はシリアの東部とイラクの西部にまたがり、依然としてイギリスよりも広いのです。ここでは「イスラム国」に、英語のIslamic Stateの頭文字のISとして言及しましょう。 【図】2015年4月3日現在の「イスラム国」活動領域
「カリフ」と評議会
さて、そのISの内部は、どのような支配形態になっているのでしょうか。まず最高指導者であるカリフのバグダーディーがいます。その下に二人の副官がおり、それぞれがイラクとシリアの統治を担当しています。副官は二人ともイラク人です。バグダーディー自身がイラク出身ですので、このISの支配層はイラク出身者で占められているわけです。 ISには国家のように省庁にあたる官僚組織が存在し、これが統治にあたっています。その中でもメディア部門には力を入れているのが目を引きます。 バグダーディーは少数のメンバーから構成される評議会に補佐されています。実は2003年以降のアメリカのイラク占領に対する抵抗運動に参加して捕らえられ、同じ刑務所にいた人々のネットワークが評議会などのISの中枢を占めていると考えられています。 この評議会が実際の権限を掌握しており、カリフは“あやつり人形”に過ぎないという解釈と、カリフは独裁者であり、評議会は飾り物に過ぎないという認識とが対立しています。また空爆を受けてカリフのバグダーディーが死亡したという説があります。もっと信ぴょう性のありそうなのは、負傷したという説です。というのは、昨年6月以来、公衆の面前に現れていないし、また、その映像も公開されていないからです。
使用言語ごとに部隊構成
ISの特徴は、外国から多くの若者を引きつけている点です。この4月に公表された国連の報告書によれば100以上の国々から2万5000人強の若者が、シリアやイラクに向かい過激派組織に参加しています。その多くをISが引き寄せているようです。こうした若者を多く送り出している国として、チュニジア、モロッコ、フランス、ロシア、インド洋の島国のモルディブ、北欧のフィンランド、それにカリブ海の島国のトリニダード・トバゴなどを国連の報告書は指摘しています。 こうした戦士たちをいかにしてISは統率しているのでしょうか。ISを取材したジャーナリストたちによれば、若者たちは使用言語によって部隊を構成しているそうです。つまりフランスやベルギーなどのフランス語圏からの若者たちは一つのグループを作り、ロシアからのグループは、ロシア語のグループという具合にです。 新たに外国から到着した若者たちは2週間ほどの軍事訓練を受けるようです。外国から流入した軍事経験のない大半の若者たちの戦闘員として技量は未熟です。強くない、というのが現地に詳しいジャーナリストの評価です。例外はロシア政府軍との戦闘で実戦経験を積んだチェチェン人です。なおISに流入した女性の数に関しての詳しい情報はありません。男性よりも、はるかに少ないようです。