富良野チーズ工房 個性派チーズが勢ぞろい 体験充実、五感で楽しむ乳製品
北海道の富良野チーズ工房は、高台の白樺に囲まれた自然豊かな場所にある。ホルスタイン種から搾った新鮮な生乳を使った乳製品を製造販売するほか、ガラス張りの製造室の見学や、バター・アイス・チーズなどの「手作り体験」を通して、富良野産ならではの品質とおいしさを発信している。 1983年に牛乳・チーズ作りを通じて富良野の酪農家の安定経営を支える目的で、富良野市と富良野農協の共同出資で第三セクター「ふらの農産公社」を設立した。平成18年からは指定管理者制度のもと、市所有の建物を含めた施設の管理運営を行っている。 チーズ公園と呼ばれる広い敷地内には、目玉施設の「富良野チーズ工房」ほか、第1工場の「チーズ工場」、「アイスミルク工房」「手づくり体験工房」「ピッツァ工房」を併設。地元の新鮮野菜や果物の素材を生かしたジェラートやピッツァも楽しむことができる。 富良野チーズ工房で発売する「ワインチェダー」は、1982年に富良野市と酪農学園大学が研究開発した個性派ナチュラルチーズ。地元産の赤ワインを混ぜ込むことで赤紫の大理石模様が浮き出して見える幻想的な見た目が特長の、日本で唯一のワイン入りチーズだ。
「メゾンドゥピエール」は口当たりのいい白カビタイプで、工房のイメージでもある石の館の仏語「メゾン・ドゥ・ピエール」にちなみ名付けられた。イカ墨入りカマンベール「セピア」は中身の黒が富良野の肥沃な大地、その周りの白カビは粉雪を表現した珍しいオリジナル商品となっている。 多種多様な個性派チーズの誕生には「余剰牛乳問題の解決や、富良野の農産物を広げる目的があった」と後藤正紀常務取締役は語る。当時酪農学園大学の学生だった後藤氏は、市の職員となってチーズの開発に携わった。手作り体験工房では「ふらの牛乳」を使ったマスカルポーネチーズ、バター、アイスが体験できる。バターづくりは昭和の頃から継続し、98年に開始したチーズ作りでは、できあがったチーズを自作のイラスト入りカップに入れて持ち帰ることができる。牛の模型での乳搾り体験やチーズの歴史コーナー、チーズ職人になれる記念撮影コーナーもある。 幅広い世代が楽しめる人気施設も、コロナ禍は来館者が半減し非常に厳しい赤字経営が続いたという。昨年からはインバウンドもあって回復基調となったことで、年間来館者数は25~26万人程、多い日は1000人が来場し、富良野ならではの体験を楽しんでいる。