お願い!ポルシェの“大天使ペトロール様 911”がアウトドアブーツを履いたなら
ラリーエディションである「911ダカール(以下ダカール)」を発売するというニュースには、心底興奮した。ポルシェは、かつてパリ・ダカール・ラリーを制覇した時代があるメーカー。クルマ全体にドライバーの神経を張り巡らすことができるポルシェのエンジニアリングは、ラリーでも“間違いなし”って確信があったんだ。 【写真】ポルシェ 911 ダカールの全体像 そんなダカールは、「これ以上やることある?」という現行モデル(992型)の爛熟(らんじゅく)ぶりが、誕生につながっている。 まず四輪駆動の「911 カレラ4 GTS」をベースに地上高を50㎜上げている。さらに30㎜上げることもできて、大型SUVのカイエン並みに高くなる。 路面状況に応じて足まわりの硬さを変えられるアクティブダンパーとアンチロールシステムを標準装備。吸気口や冷却システムはオフロード用に改造されているものの、システムや基本構造は「カレラ4 GTS」をそのまま踏襲しているんだ。真の強者にとっては、勝負に武器や地形なんてあってないようなもの。剣豪・宮本武蔵の『五輪書』でいえば「一理に達すれば万法に通ず」ですよ(笑) フルバケットのレカロシートに身体をおさめてエンジンをかければ、低くて獰猛な水平対向6気筒エンジンがドロドロと唸りを上げる。視点は高いし、バイブスは競技用ラリーカーのそれで、洗練さの一途をたどる他の911モデルとは明らかに違う。 なんすかコレ!? 新鮮だけど、むしろ帰るべき場所に帰ってきた感覚……。そして走り出し、最初のコーナーを曲がるとこのクルマの神髄を目の当たりにする。街中でさえ、地面に吸い付くようにぐいぐい曲がるんだ。 驚いたことに、新型のマカンがそうだったような、ストロークの長さを楽しむタイプの足まわりではない。峠でラリーモードに入れるとリアのトラクションが上がり、後輪操舵とあいまってシャープな挙動に。同時に強力な4輪のトラクションコントロールが働いて、車体もハンドリングもフラットさをキープする。 ステアリングもアクセルも足まわりもすべてを委ねられるコアがあって、乗り味はまるでウオツカマティーニのようにクールで熱くてキレている(笑)。加速時とブレーキング時にわずかに車体がゆれるけど、“ゆらす”気はない。徹頭徹尾911の哲学をオフロードに持ち込んでいるんだ。 履いているタイヤがアウトドアブーツのラグソールみたいにゴツいオールテレーン(全地形対応)タイヤだから、アスファルトでは限界がすぐくるものの、未舗装路だろうが砂丘だろうが、どこでも入っていけるタフネスはまさに浪漫の塊。 誰もが気になるところの乗り心地は文句なしに911史上最高。路面入力をバネ下で吸収して、涼しい顔で地上を浮遊するように平行移動する。1日で400㎞走っても、まったく疲れなかった。 なにより、あからさまなほどエンジン至上主義車なのね。豪放で刹那的で、一瞬を圧縮し爆発させなければ存在しえない大天使ペトロール様の霊言あらたかって感じですよ(笑) 最高なので718 ケイマンのダカールも強く希望!