東京女子プロレス 荒井優希【前編】私は「これからも戦い続ける」と決めています。だからプロレスを辞める決断をした人に負けることはできない
【マットが剥がされた床に叩きつけられ足の感覚が無くなって】 ――1.4後楽園のリングで改めてマックスと対峙した時はいかがでしたか? 荒井 諦めもあったというか、案外落ち着いていました。「逃げたい」とあがいても試合は始まります。リング上では目の前のマックスを、対戦相手としてしっかり捉えていました。 ――試合では、場外のマットを外されて直接、床に体を叩きつけられました。 荒井 あの時、客席にも投げられました。危険を察知し「絶対に嫌だ」と思ってロープに捕まっていたのに、あっという間に引き剥がされて客席に放り投げられました。その後、マットを剝がされて床に落とされて、足の感覚がなかったんです。 怖くなって、翌日病院と整骨院に行きました。私がレスラーであることを理解してくれている先生に症状を伝えると、「原因は足ではなく腰。腰に神経が集まる場所があり、そこが圧迫されたので、一過性の痛みだから大丈夫だよ」と言われ、ホッとしました。 ――荒井選手は、もともと身体が丈夫なんですね。 荒井 強い身体に産んでくれた両親に感謝しています(笑)。 ――そのマックスに勝利し、第12代IP王座を獲得しました。 荒井 初夢に出てくるくらい追い込まれた相手に勝つことができました(笑)。ただ試合の翌日、劇場公演が入っていたんです......。 マネージャーさんも私の体調を考えて、普段は試合の翌日はお休みにしてくれるんですけど、1月5日は新年一発目の公演。前日のダメージが大きすぎて体が動きませんでした(苦笑)。 ――試合の翌日だとアザとか心配ですね。 荒井 最初の頃は隠していました。でも最近は隠してないですね。「プロレスラーだし、アザくらいあるでしょう」と開き直っています(笑)。
【初防衛戦の相手は4月に卒業した後輩"長野じゅりあ"】 ――2月にIP王座の初防衛戦がありました。挑戦者は4月に卒業が決まっていた長野じゅりあさん。 荒井 それまでタッグ王者時代を含め、対戦相手は先輩がほとんど。(プロレスラーとしての)後輩とタイトルマッチを行なうのは初めてでした。 シングルの防衛戦自体も初、それ以外にもたくさんいろんなことが重なって、挑戦者としてタイトルに挑むより、王者としてタイトルを防衛するほうが「プレッシャーが大きい」と感じました。 ――それはどういうところから感じましたか? 荒井 挑戦者としてタイトルに挑む時は「ベルトが欲しい」という気持ちだけでいいですけど、王者として挑戦者を迎える場合は、ただ勝てばいいというわけではありません。「どんな試合でお客さんに納得してもらえるか?」と試合内容も大切になります。自分なりに試合の組み立てを考えていました。 タッグの時は、赤井沙希さんという心強い先輩が近くにいて、常にサポートしていただきました。でもその赤井さんも昨年11月に引退され、「本当に1人になったんだ」と実感して。 もちろん東京女子の先輩は優しい方々が多いですけど、試合となると本音で話せる人は限られちゃうので、塞ぎ込んでしまって。王者としてのプレッシャーで自分自身を追い詰めてしまっていました。 対戦相手のじゅりあさんは4月にプロレス卒業を控えていて、「最後に挑戦したい」と思ってくれたこと、そしてシングルマッチでしっかり戦えることは嬉しかったです。 ただ、私は「これからも戦い続ける」と決めています。だからプロレスを辞める決断をした人に負けることはできないと、強い気持ちで初防衛戦に臨みました。 >>中編に続く 【プロフィール】荒井 優希(あらい ゆき)1998年5月7日生まれ、京都府出身。167㎝。女性アイドルグループ・SKE48チームKIIのメンバー。2021年5月4日、東京女子プロレス後楽園ホール大会にてプロレスデビュー(渡辺未詩&荒井優希vs伊藤麻希&遠藤有栖)。東京スポーツ新聞社主催「2021年度プロレス大賞」で新人賞を受賞。2022年7月大田区総合体育館大会において第10代プリンセスタッグ王座を戴冠(パートナーは赤井沙希)。2024年1月、後楽園ホールにてインターナショナル・プリンセス王者のマックス・ジ・インペイラーに挑戦。見事勝利し、第12代インターナショナル・プリンセス王座を戴冠(自身初のシングル王座)した。 【大会情報】『TJPW PRISM '24』■日時:2024年6月9日(日) 開場10:30 開始11:30■会場:東京・後楽園ホール荒井はセミファイナル「インターナショナル・プリンセス選手権試合」でLAテイラーと自身3度目の防衛をかけて対戦>>詳細はコチラ
大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi